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□初恋最前線
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「剣城、お疲れさま」
「……お疲れ」
手洗い場で顔を洗っている剣城に、天馬はタオルを持ってきた。二人きりになりたかった天馬は、タオルを届けるという名目で追いかけてきたのだ。
はい、と手渡されたタオルを受け取り、剣城は水滴をぬぐう。天馬のタオルだろうか、お日さまのいい匂いがした。
「わざわざ持ってきたのか」
「うん。剣城がこっちに行くのが見えて。それに一緒にいたかったから」
あはは、と天馬は照れ笑いする。
剣城は受け取ったタオルを口許に押し付けた。はにかむ天馬が可愛くて仕方ない。
「めっ迷惑だったらごめん」
「松風、」
「なに、つ……」
「ありがとう」
ちょん、と唇が触れ合う。天馬は目を見開いて息をとめた。かああっと全身が熱くなっていく。
ちゅ、と小さなリップ音がたった。口をぱくぱくさせている天馬と少し照れ臭そうにしている剣城。
「っ、なんで」
「たまにはいいだろ。気分だ気分」
ふいっと剣城は顔をそむけた。その剣城の顔も、ほんのり赤く染まっている。
練習に戻るぞ、と後ろを向き、剣城は先に戻ろうとした。
クイッとユニフォームがひかれる。
後ろから天馬が、顔を真っ赤にしながらぽそぽそと何かつぶやいた。剣城はよく聞こえなかったようで、天馬に顔を近づけた。
「も、一回、」
「は?」
「もう一回、キス、したい」
ドキドキしながら天馬は言った。耳まで真っ赤にして、剣城の返事を待つ。
一瞬だったが、剣城とやっとキスできた。天馬にはとても嬉しかった。なかなか一緒にいられかったから、こうして触れ合えるのにはたまらない喜びがあった。
ふいうちで天馬にキスしたいと言われ、剣城は内心、かなり高ぶってしまっていた。素でこういうことを言うからたちが悪い、と剣城は思う。
「……一回だけ、だからな」
「っ、うんっ」
ぶっきらぼうに言うと、剣城はふたたび唇を重ねる。ただ、さっきのような一瞬のキスではなく、ちょっと長いキスだった。
初恋最前線
いつだって、君にいっぱいいっぱいだ。
End.
2011.12.15
タイトルお借りしました。
箱庭