四天生活
□財前光のとある休日
1ページ/3ページ
休日、謙也君に呼び出された。面倒やからシカトしようかと思ったけど、そうすると後がもっと面倒なんで、謙也君の家に行くことにした。
家の前に着いて謙也君のケータイにかけると、二階の窓が開いて
「入ってええで!」
家の人とかおったら気まずいんすけどと思いながら、言われたとおり勝手に入った。
階段を昇って謙也君の部屋に入ると、謙也君はテレビの下の棚に頭と手を突っ込んで、何かを探していた。
「お邪魔します。」
謙也君は一度だけ俺を見て
「その辺テキトーに座ってくれ。」
また捜し物を始めた。
「何してるんすか?」
「いやな、コントローラーが…」
その直後、部屋のドアが開いて
「お、財前やん。」
ユウジさんが入って来た。
「こんちわ。」
「おお、お前も参加するん?」
「参加…?何にですか?」
「何にて、リンドバーグ再結成のお祝いやろ。」
「初めて聞きましたわ。」
もし今日呼び出された理由がそれだとしたら、今すぐ帰りたい。
「あったで!お、ユウジ来とったんか。」
「今来たトコや。で、さっそく始めるか?」
この人らは一体何し出すんやろ、ほんまにリンドバーグ再結成を祝う気か?
「まだ白石来てへんし、もうちょい待と。」
白石部長も来ると聞いて一瞬安心したけど、これから何をするのかよう分からんし、あの人もあの人でたまに頭オカシイんちゃうかと思う時あるから、不安は拭いきれない。
来たことを後悔し始めたから
「これから何するんすか?」
謙也君に聞くと
「何て、そんなもんウイイレに決まっとるやろ。」
「え、リンドバーグ再結成祝いちゃうの?俺そのつもりで“今すぐキスミー”めっちゃ練習してきたんやけど。」
「アホや(笑)」
どうやらユウジさんの冗談だったようで、とりあえずは安心した。ていうか呆れた。
その後謙也くんが飲み物を持ってきて、いつも通りの下らない会話が始まった。俺は部屋にあった雑誌を読みながら、それを半分聞いてるっていう、いつものパターン。
「俺な、こないだひっさびさに三国無双やってん。」
「あー、アレ久しぶりにやるとおもろいよな。ほんでお前よく張角の真似しとったもんなぁ。」
「おおっ…我が魂、天へと昇らん…」
「ぶはっ!(笑)やばい似とる!で、無双いくつや。」
「2や2。」
「2って呂布が恐ろしく強い時やん。下手したら一撃で死ぬやろ。ほんでめっちゃ追いかけてきよるしな。」
「どけぇぇぇい!」
「似とる!(爆笑)あかん、ここに呂布がおるわ!」
確かに似とるけど、何で先輩らこんなアホなんやろと、いつも客観的な目で見てしまう。
「でな、全部やり直して武将を一から育ててん。こないだ何人かの4つ目の武器とレアアイテム全部取ったところや。」
「結構やり込んでるなぁ。」
「夢中になってもうてん。あ、いうても小春には勝てへんで?」
ユウジさん普通にしてたら結構イケてると思うのに、やっぱキモイ。
「あー、なんか俺も無双したくなってきたわ。」
「やったらええやん。財前、お前もやるか?」
雑誌から目を離さず
「ええですわ。」
それだけ答えた。
「つれへんなぁ。ユウジ、お前の背中の押入にゲームソフト入った箱あんねん。悪いけど取ってくれ。俺本体繋いどくから。」
「ほんまに開けてええんか〜?見られたらマズイもんでも入ってるんちゃいます〜?」
「アホ言えそんなん無いわ!」
「そうでっか〜ほな開けるで〜」
カチャッと収納が開く音がした後
「うおっ!!」
ユウジさんがめっちゃでかい声出して、思わず俺もびくってなった。