ショートショート

□夜空と重力にキスを
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眠りに落ちる前が一番幸せな時間だと思う。うとうとと沈みかける意識を手放して、無意識の世界に身を委ねる。
きっと、どんなことだってそうなんだ。何か大きなものに身を委ねてる時が一番安らいで、一番楽で、一番心地良い。だから誰かを求めて、全てを委ねようとしてしまうんじゃないかな。

「親の愛情を求めるのも、誰かを愛すのも、みんなそういうこと。自分の全てを委ねさせてくれる大きな存在を探しているの。みんな支えてもらいたくて必死なんだわ。」

俺の肩に寄りかかってきた彼女は、重かったら言ってね、と言った。

「どうだろうな。俺は少なからず、委ねるだけじゃなくて委ねられたいと思うけど。」

彼女の肩を引き寄せて、さっきより深く俺に寄りかからせた。もっと寄りかかって全てを俺に委ねてしまえばいい。

俺は彼女に、今ぐらいじゃ重さなんて感じないよ、とこたえた。








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