ショートショート
□掬いあげる手のひら
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くだらない話をしようか。例えば、悲しい時の気持ちはブルーだとかどろどろとした醜い気持ちは黒いだとか。そういうことを最初に言い出したのはどこの誰なのか?
おかげで僕は嘘みたいに真っ青な空を見ても悲しい色にしか見えないよ。エスプレッソなんてお腹の中にあった醜い気持ちをまた飲み込むみたいで、苦くて顔をしかめてしまうな。
ぐずった子供のような僕の心のもやもやを黙って聞いていた彼女は小さく頷いた。
「でも私は、この青いマグカップも好きだし、真っ黒なあなたのこの髪も大好きだな、」
掬い上げる手のひら
彼女の髪よりずっとかたくて真っ黒な僕の髪に、彼女は手をのばした。小さな君の手のひらが触れると、まるで髪にも神経が通っているかのようにそこから温かくなる。
途方もないもやもやとした気持ちを溶かしてくれるこの温度を、愛と呼ぶのかな。
そういえば、思い出したんだ。情熱は赤い、温かい気持ちはオレンジ、恋する気持ちは桃色。ねぇ、素敵だと思わない?