市日小説 短編

□護るべき者
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待っていると、乱菊がきた。


「乱菊…」


力の無い瞳で乱菊を見上げる。
それと同時に強烈なビンタの痛みが走った。


「アンタ!!
どうして、ちゃんと隊長を守れなかったのよ?!

私は、アンタを信用して隊長を預けたのよ?!

なのに、どうして…」


「ゴメン…ゴメンな、乱菊。
ボクが冬獅郎を守られへんかった。」


「ギン、八つ当たりだったわ。ごめん。」


「仕方ないで、自分の隊長が生死をさ迷ってるからな…。

ボクがもう少し…もう少し早くに着いとけば…」


悔しさで唇を噛む、真っ赤な血が流れ落ちる。


他の隊長格もそれを見ていた。


外は、大雨が降っている。
















卯ノ花が出てきた。
とても辛そうな顔をしていた。


「卯ノ花はん!!冬獅郎は?!」


「市丸隊長、……すみません。」


去っていく卯ノ花に言う。


「あ、りがとうございました。」






冷たくなった恋人を見つめる事しかできない。


泣く事も。


悔しさでいっぱいな心がもう頂点に達しそうだった。


恋人だったものに言う。
「ごめんな…。ボクがもう少し早くに…。」


当然なことに反応しない。


現実を突きつけるものをもう見たくなくて、その場を立ち去る。


私室に入り、壁にもたれかかった。
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