青空文庫
□君を想えば
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瞳を閉じて意識を集中し、周囲の温度を低下させる。
右腕を空へと掲げれば、そこから生まれる雪の結晶。
静かに降る雪は次第に辺りを白く染め尽くす。
ゆっくりと瞳を開くと、そこはもう白銀の世界。
無意識に小さな溜め息が零れた。
こんな事に小宇宙を使うとは…。
『ホワイトクリスマスになったらいいね』
瞬の言葉と、眩しい笑顔が蘇った。
あの時思わず『俺が降らせてやる』と、言ってしまったのは自分だ。
あの笑顔には、敵わないのは何故だろう?
答えならばもうずっと前から出ていたくせに、気付かないフリをしていた。
いつかは、この想いを伝えたい。
だが、今はまだこのままで。
アイツがこの白い世界を喜んで、笑顔を見せてくれる。
それだけで、いい―。
今は、まだ。
end