青空文庫

□声
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「おかえり、星矢」
「おう。ただいま」
やけに嬉しそうに、満面の笑みを浮かべてじっと顔を見つめられ、なんだか恥ずかしい。
「どうしたの?」
「な、もう一回言ってくれよ」
僕は星矢の言葉に首を傾げた。
「『おかえり』って言われたいんだよ」
なんだか、よく判らないけど…。
「おかえりなさい。星矢」もう一度繰り返すと、星矢の瞳が嬉しそうに輝く。
「あぁ〜やっぱり良いな」
「何が良いの?」
「声」
「声?」
「そう、声。お前に『おかえり』って言われると、癒されるんだよなぁ」
星矢の手が僕の頭へ伸びて、髪をくしゃくしゃにされる。
そんな悪戯も、今は嬉しく感じてしまう。
「いつも俺の事、そうやって迎えてくれよな」
「うん、いいよ。だから星矢もいつも笑っていて」
ニヤリ、と歯を見せて笑う星矢の目がキョトンとなる。
「だって、星矢の笑顔は、僕を癒してくれてるから」



end
 

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