REBORN!

□夢
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「ツナ、愛してるぞ。」


「普段は言わない癖に。急に改まって、どうしたの?」


「いや、ただ何と無く。急に言いたくなっただけだ。」


「変な人。」










そこで目が覚めて、
妙に納得してしまったのは
言うまでもない。


普段のリボーンが愛の言葉なんて
言うはずがないのに。


こういうとき、夢は便利だ。


自分の願望を叶えてくれる。


いつか見た夢は
ボンゴレ・ボスという
肩書きがなく、
俺とリボーンが普段着で
笑いながらオープンカフェで
のんびり昼食を取っている。


その夢を見た俺は
鼻で一蹴して拳を握り締めた。


まず、そんなことが
出来る訳がなく、
ただ、願望として
恨めしげに夢の中の自分に
嫉妬して、終わりなのだ。



「馬っ鹿らしい。」



窓を見て、
その先の景色を見た。


防弾硝子で普通のより
厚い硝子。


その所為で
見た景色は涙で滲んだように
ぼやけて、はっきりしない。


そう。


見え難いのは、
硝子の所為であって
涙の所為ではない。



「今何時…? 獄寺ー。」



独り言のように
か細い声で言ったのに
1分もしないで
獄寺は扉を開ける。



「お呼びですか?」



黒スーツをきちんと着て
昔の、
あの愛くるしい笑顔はない。


いつも厳しい顔をしている。


そういう顔にさせたのは
他の誰でもない、俺。


ベッドに潜り込んだまま
手招きをして
傍らにしゃがませた。



「今日の予定、何?」


「今日は…、」



親指の腹で
俺の目元を拭って
また、手帳に目線を戻した。



「何?」


「何でもありませんよ。…今日は11時より幹部の会議に出て貰います。その後は書斎にて書類に目を通して頂きます。」


「ん、分かった。」


「では、59分後に会議室で。」



立つ際、俺の頭の寝癖を
手櫛で解いて
そのまま額にキスを落とした。


獄寺の背中を目で追って、
先程、触れられた
目尻に触れた。


そこは微かに湿っていて。



「あ゙ー、ばれたな…。」



伸びを一つして
いつもの、
俺にとっては日常が
始まる。







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