REBORN!

□愛唄 あいか
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部下が死んだ。
名も知らない部下が。
俺の為に。
威嚇弾に身を挺して。
死んで逝く。
誰の部下で、
いつ入ったかも、
何も知らないまま。
部下は幸せそうに笑うのだ。



「ケ、ガはありませんか…? ボス」

「うん、ないよ」



倒れた部下を見下ろしたまま、
機械みたいに言う。
そしたら、
笑うのだ。
俺と部下は。
笑うことは俺が最後に出来る
精一杯の施し。
サービスと言った方が、
良いだろうか。



「よ、かった、あ」



碧色の瞳が開かれることはない。



「悲しいね」



そう、言うだけ。
言うだけなのだ。
結局は。
部下が死んだと言っても
結局は‘知らない人’なのだ。
第三者で傍観者。
その目で見るのだ。
彼を。
死んで逝った、
あの部下を。

誰も可哀相とは思わない。
思うのは、
威嚇弾に飛び込んで行った、
馬鹿で無力。
ただ、
その思うのだ。
でも、
それを彼は知らない。
知らないまま死んで逝った。

でも、
その方が幸せなのかも知れない。
だって、
彼の中では、
愛しいボスを守ったと。
優越感に浸って。

そして、
俺らは忘れていく。
当たり前に消え去った彼を。
誰も涙することはないのだ。



「さよなら」



たった4文字。
感情は込めないまま。
彼の額に感謝のキスを落として。

俺を囲みつつ、
守るように、
守護者が銃を撃つ。



「山本、どいつ?」

「んー、あいつ」



指差された方の、
顔が見えない男に近寄る。

後ろで獄寺の声がした。
けど、聞こえないふり。



「怒っているの? どうして? たかが部下一匹だよ? ボスとあろうお方がこんなので怒るなんて。…拍子抜けだよ」

「ひ、ばり?!」



部下を撃ったのは雲雀。



「血迷った? 俺らを、ボンゴレを敵に回すなんて!!」



抗争が聞こえる。
絶え止まない銃声が。

でも、
だんだんと静かになって、
耳に入るのは雲雀の声だけ。



「欲しいものがあるんだ」

「…欲しいもの?」

「君が死んで逝った者に一瞬で傾けた愛情。そして、憎むべき敵に向ける憤怒の目。どっちも欲しいんだ。僕は」



ホルスターから、
一気に銃を引き抜いて。
雲雀の眉間に向ける。



「そんな、馬鹿みたいなことで人一人殺したの?」

「だって、狡いじゃない」

「…誰が?!」



すっ、
と、
指を向けたのは、
死んだ彼。



「君を守れて死んで。君から愛情を貰って。君が自分の為に仇を討ってくれる。凄く幸せで、凄く、狡い」

「…雲雀、貴方は…。貴方をこちらの世界に入れるんじゃなかった…!!」



リボルバーを引いて。



「待って」

「…?!」

「僕が欲しいのは、そんな悲しい同情の目じゃない」



銃を抜いたかと思えば、
銃口はこちらを捉えていない。
銃声が3発。
そして倒れて、
死んで逝くのは、
俺の側近。



「あ、あ、ああぁぁあぁあ!!」



涙が流れた。
誰に対してか、
分からない。

銃を突き付けて。

殺意を向けて。



「殺してやる。殺してやる。殺してやる…殺す!!」



そしたら、
雲雀は笑った。
憂すら笑みを向けて。



「そう。その目。その目のまま早く僕を殺して、めちゃくちゃにして、愛情を向けて」



「…歪んでるっ!!!」



首を横に振りながら、
引き金を引いた。

ドンッ!!

それは、
1番醜い音。








でも、
これが、
君に捧げる一生分の愛。




End
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