合同

□幸せ日常
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「うー、無理!! お腹減った!」


現時刻、10時10分。

朝食はきちんと食べた。

2時間前に。

昼食にしては早いけど仕方ない。

胃と背中がくっつきそうなくらい。

お腹は減りすぎて鳴りもしない。

変な時間の所為か、食堂には10人足らず。

ジェリーさんの姿の元へ駆け寄る。


「あら、アレン君。さっき振りね。」

「こんにちは。あの、甘味系が食べたいんですけど…適当にケーキ3ホールくらい作って貰えませんか?」

「…それ、おやつよね…? 食事みたいね。作ったら持って行くから席に座って、みたらし団子でも食べてて頂戴。」

「ありがとうございます。」


大皿に乗ったみたらし団子を見て子供みたいに目を輝かせて、席に着いた。

一くし取って、一粒口の中へ。

絶妙なタレの甘辛さが口の中に充満する。

笑顔をジェリーさんに向けて、もう一粒口に入れると横から伸びた手が一くし取った。


「相変わらず、よく食うな。」


馴染みのある、しかし久しく聞いていなかった声。


「…お帰りなさい、ラビ。」

「ただいま、アレン。」


伸びた手の先には、長期任務から帰って来たラビだった。

右頬と、額。

手の甲に包帯が巻かれた痛々しい治療跡。

口にみたらし団子を入れて、タレを舌で掬い取る行為の後、あどけない笑顔を見せた。

その笑顔を見た瞬間、胸の中心にあった鉛みたいな重しが、ストンと腹に落ちた気がした。

心も身体も、全てが安心したんだと分かった。


「ラビ?! 帰ってたの?」

「ただいま、ジェリー。うん、今さっきな。」

「そう…。アレン君、お待たせ。」


目の前に運ばれたケーキの数々。


「げっ! これ全部アレンの?」

「そうですよ。ラビも食べます?」

「んじゃあ、少しだけ。」


ホールごとラビとケーキを突き合って、任務のこととか、食堂に出来た新メニューとか、どうでもいい、たわいない話をして二人笑い合って盛り上がった。



「あー、食った! 口ん中、甘!!」

「そうですか? あれくらいじゃ、腹6分もいきませんよ。」

「…お前の腹、どうなってんさ?」

「さぁ? ラビと一緒だと思いますよ?」

「一緒の訳あるか!!」


ラビの自室へと着いた途端、ラビは倒れ込むようにベッドへダイブした。

伏せたラビの横に腰を下ろした。


「つ、か、れ、たぁー。もう長期は勘弁して欲しいさー。」

「文句言っても、コムイさんのことだから、聞く耳持たないと思いますよ。」

「だよなぁー。ってアレン今日オフ?」

「ええ。予定では明日までは任務入ってないんで、ラビといちゃつこうと思って。」

「っ、お前、可愛い過ぎ!!」


首にラビの腕が回って、背中からベッドへ押し倒される。

キスされると身構えたとき、上からのしかかる重量が消えた。

そっと目を開くと、ラビがベッドから下りていた。


「ね、風呂行かね? 俺、長期だったから、ゆっくりと湯舟に浸かってないんさ。」

「あ、はい…」


少しがっかりしている自分がいた。

ラビを見ると、嫌な顔を向けている。


「何、その顔…」

「いや、がっかりしているみたいだなぁと思って。キスされて、あんなことや、こんなことされるって期待した?」

「っ! する訳ないでしょう!! ラビのH! ほらっ、お風呂行きますよ!!」


ラビの背中をぐいぐい押しながら、核心を突かれた僕の顔は真っ赤で。

こんな顔、見られなくてよかったと安堵した。





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