合同

□愛してる
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「ひ、ばりさん、待っ…て……」



僕の二歩は彼の三歩。
僕の四歩は彼の六歩。
だから、だから
放課後デートだって
隣を歩いたことはない。
彼の歩幅に追い付けないから。
息を切らしつつ
彼の後を小走りで追う。
けれど
一向に彼との距離は縮まらない。

とうとう足を止めて息をつく。
見えるのは自分の靴と地面だけ。

ゆっくりと顔を上げると
彼がこっちを見て優しい眼差しを
向けている。


「雲雀さん…?」
「何してるの? 早く行くよ」


歩み寄って真っ白い手を
差し延べてくれている。

嬉しくて、愛されてる、と
自惚れそうで。

その手を取って
横に並んだのを
見届けてから彼は歩き始める。


「雲雀さんが優しいから明日は雨ですね」
「なに、じゃあ手離してもいいの?」
「や、それは困るんで止めて欲しいです」


冗談を言えるくらいに
彼に近付けた。
そんな風にこれからも、
彼に近付けて歩いていければ
いいと思うんだ。


彼が『愛してる』って想うこと。
それは同時に僕が想うこと。
でも、そんな奇跡は必要ない。
例え神様がタダであげる
って言ってくれても。


「雲雀さん」
「なに?」


言葉一つに慈愛が満ちているから
だから、必要ない。
目に見えなくても
身体で感じ取れるから。


『愛してる』『愛されてる』
の想いは。


父さんと母さんが
そんな想いの心だけは隠して
生んでくれたのには
それなりの理由があった。
だから二人は、
忘れないように確かめ合って
途切れそうな夜を繋いだんだ
溢れないように分け合って
だから、そう。


俺が彼に何を与えるでもなく
彼が俺に
無理に寄りそうわけでもなく

だから探しに行こうと思う。
二人だけの最大公約数を。

声にならぬ想いは、
無理に言葉にするでもなく
いつか俺も彼も分かる時、まで…


「雲雀さん」
「だから、なに?」
「  」


自然に笑った貴方の笑顔は
最大級。
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