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□君為
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この国で一番広く一番高い建物の前に立っていた時、風が馴染みのある香りを運んで来た。

風上へ顔を向けると真剣な顔をした親友が立っていた。


「男鹿…?」

「古市が次の魔王後継者なんだって?」




−−−−君為




「…情報早ぇな。誰から吐かしたんだ?」

「なんだその、俺ヤンキー宣言。お前といえどムカつく」


首を腕で絞められ昇天5秒前。

ただでさえ力が強いのに、俺の細い首に有りったけの力を込めたらポキンと折れる。

そんなこともわからないのか、この馬鹿は。


「古市君。心の声だだ漏れ」

「気の所為か、文末に可愛いらしいピンク色のハートが見えるんだけど?」

「気の所為じゃないわ、ボケェェェ!!」


さっきより力強く絞められ、本気で思う。

ホントに死ぬかも。


「って冗談はさておき…ホントにお前が魔王になるのか?」


力が抜け、無駄のない筋肉質の腕から放された。

自由の身になったのに、俺は男鹿の顔が見れなかった。

でも、その声は悲しかった。


「誰から聞いたんだ?」

「そんなのどうでもいいだろ。答えろよ。お前が次の魔王になるのか?」

「……うん」

「なんで?」

「今代の魔王様にお子さんが出来なかったから。後継者が生まれない場合、魔王様に次ぐ魔力の持ち主が魔王になる…って学校で習っただろ?」


曖昧な顔を向けて、笑ってみせた。


「お前、魔王の義務知ってんのか?」

「知ってるよ…。学校で習ったし、お前みたいに馬鹿じゃないからな」

「はぐらかすな。魔王の運命は…」

「この国に命を捧げること。……魔王の別名は、生贄」


この国は魔力で維持してある。

でないと、いつ崩壊してしまうかわからないから。

この国は1世紀前に滅亡するはずだった。

だか何億という人民を助ける為に、当時の魔王様は命とも言える魔力を全て使い、この国を支える柱となった。

それから、魔王の一族は自分の命を国に費やすのだ…と、今の魔王様から聞いた。


「お前は、それをわかった上で魔王になるのか?」

「…自分の命と民の命、どちらかかが重いなんてわからない。けど、ここで俺が魔王にならない限り、この国に訪れるのは破滅だ。そうなれば、大好きな皆が死ぬ。……お前もだ、男鹿。………大好きな人に死なれるぐらいなら俺の命を捧げていいよ」


きっと笑って言わない限り、男鹿は俺を引き止めると思った。

やっと決意した信念が男鹿の一言で180度ひっくり返ってしまいそうで怖かった。

だから凄く狡いけど、俺は笑って行くよ。


「……だから、笑顔で『行ってらっしゃい』って言って」


魔王様が住む宮殿へ足を運ぶ。

魔王一族はこの宮殿から出られない決まり。

だから男鹿に会えるのは、これで最後。


「男鹿!! 最後の願いくらい」

「納得いかねぇ!!!!!」

「………は?」


俺の話し中ずっと俯いていた男鹿が、鼓膜が破れるんじゃないかって思うほどの大声を出した。


「なんで、お前一人で背負うんだよ! 俺達の国だ! 俺達、民の魔力を少しずつ分ければ、お前は死なないで済むじゃねぇか!」

「無理だ…。例え民の生命に関わらない程度の魔力を集めたって俺の魔力には及ばない。維持に回すなんて出来っこない」

「だからって、お前一人が死んで民が喜ぶと思ってんのか?! お前のお袋さんや親父さんや妹だって、お前を笑って送り出したのか?!!」


痛い所を突かれ、本当に曖昧に笑うしかなかった。

家族が笑って見送ってくれるわけがなかった。

辛そうに笑って涙袋を涙で一杯にして。

家族の一番見たくない笑顔を見た瞬間。

こんな顔をさせてまで魔王にならないといけないのかと、自問自答した後、涙が流れた。

死にたくない、行きなくない。

けど、死んで欲しくない。

色々な感情が合わさり壊れそうだった。

だけどその時、男鹿の笑顔が浮かんで涙が涸れた。


「家族よりも友達よりも、男鹿を死なせたくないって思ったんだよ」

「古市……」

「だから、ヘタレだし勇気もないけど…、男鹿の死に顔を想像するよりか、自分の死に顔を想像したほうが増しだから……。だから、魔王になろうって思ったんだ」


笑顔から泣き顔へと変わっていくのが自分自身わかった。

宮殿内の階段を上り詰め、入口の扉を開こうとすると、後ろから男鹿の声。


「一年だ!! 一年で宮殿に入ってやるからな!!」


男鹿の台詞に目が点になった。

宮殿には魔王一族の他に貴族、何かに長けてる者しか出入り出来ない。

勉学であったり、武術であったり。


「超がつくエリートしか入れない宮殿に?」

「おう!! 超が三つぐらいつくエリートになってやる!! ……そんで、宮殿に入れたらお前の重荷少しは一緒に背負うから、それまで死ぬんじゃねぇぞ! 王座で踏ん反り返って待ってろ!!」


滅多に涙を流さない男鹿が、俺の為に泣いていた。

泣いてくれていた。

遠く離れている男鹿が、とても大好きで愛しくて。


「男鹿の為なら何年でも待つよ…」

「なんて言ったんだ? 全っ然、聞こえねぇよ!!」


涙が溢れて声が掠れた。

俺も男鹿も。


「待ってるからな!!!」


何年でも。


「絶対、迎えに行くから待ってろ!!」


その言葉に頷いて、扉を開いた。










「魔王様。新しい側近の者が来ました」

「あぁ、通したら君は下がっていいよ」


目を通していた新しい側近の書類をテーブルに投げ捨てて。

護衛と入れ違いに、新しい側近がやって来た。

俺の前に立って背筋を伸ばし、真っ直ぐな目を向けて敬礼してきた。


「本日付けより魔王様側近となりました」

「側近の地位まで上り詰めるのは大変だったろ?」

「いえ、魔王様の為なら苦はないようなものでした」

「そうか…。あの馬鹿が側近なんてビックリしたぞ。……努力したんだろうが約束から二年過ぎた」

「しょうがねぇだろ。試験がすっげー難かった」

「それは、お前が馬鹿だから」

「うっせーぞ、アホ古市」

「お前に言われたくない、馬鹿男鹿」

「憎まれ口も相変わらずだな……。……まぁ、とにかく……。迎えに来た、古市」


腕を取られ引き寄せられて、近くに男鹿の体温を感じた。

声も胸も体温も匂いも全て男鹿だと肯定してくれる。


「男鹿に会ったら最初に言おうと思ってた言葉があるんだけど…」

「何?」

「……男鹿が好きだ」










End



意味不だし長いしで いい所ないな!!!
とにかく!!
古市は男鹿が好きで男鹿も古市が好き!!
で万事オッケー!!!(にしといて!!)
本当は男鹿が古市を連れて逃げ出す設定だったけど 予定は予定に過ぎなかった(笑←






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