REBORN!

□夢
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ベッドから起きて、
常備してある
黒のカッターシャツと
黒スーツに
身を包んで。



「これを着るのにも慣れたな…。」



独り言のように呟いて
鏡の前で黒色のネクタイを締める。


これを正装としてから
長い長い月日が流れた。


周りから見たら変な服装。


なのに、いつの間にか
これが、日常の
ごく普通の服装となっていた。



「別に、嫌な訳じゃないけど…。」



ホルスターに入っている銃。


これも、
そこに入っていないと
違和感を覚えるほどになった。


一般人から見たら有り得ない。


昔は、その
有り得ない、
と思う部類だったのに
今では有り得ない側に
なってしまっていた。


真っ白い手を見ながら
そう思った。


今は綺麗な手も
14時間前までは
他人の赤い液に塗れていた。


この銃も。


この服も。


毎日、部下が洗ってくれても
やっぱり、仄に香る
血の臭い。


一般人には分からないほどの
微かな臭いなのに、
そこまで分かるということは
慣れてしまっているから。


その臭いを
さも当たり前かのように
毎日、毎日、毎日
嗅ぐことに。


そんな非日常に
俺の為に足を踏み入れて
手を鮮血に浸からせている
俺の大切な友達、
だった
今の部下。


友達だったのに、
という辛い言葉は
もう言えないほどまで、
侍従関係になっていた。


悔しい、より
悲しい、より
遣る瀬ない、の方が
気持ち的には
合っているかも知れない。


それでも、
引っ括り返してしまえば
銃を握ることも
他人の鮮血を被ることも
友達から、
侍従関係となったのも
この黒スーツを着た、
あの瞬間から
全ては決まっていた。



「…………慣れって、怖いな…」



鏡に額をくっつけて
何て言った所で
もう、日常には
戻れないのだけれど。








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