スカイラフター

□第1話
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 少年は考えた。自分の存在意義を。
 毎日繰り返される同じような日常。かわり映えのない日々に、少年は刺激をいつも求めていた。だが、同時に平穏に毎日を繰り返したいと思っていた。
 この矛盾した思いを吐き出すことなく、ただただ日常を送る。
 毎日のように町に出て、食糧の買い出しに行く。面倒を見てくれる恩人の言うことを聞き入れ、少年は罵倒の飛ぶ場所へと歩き出すのだ。
 少年は、どの生物から見ても“異端”だった。その姿は、どの生物にも当てはまらず、しかしその脳には人同等の知識を持っている。
 醜い姿に、博識な中身。少年が忌み嫌われるのは、避けられないことだった。
 罵声と暴力が飛びあう中、少年の心を癒すのは、近隣に蔓延る美しい森と湖。恩人の許にある膨大な量の書物と、そして何度となく夢見た外の世界への憧れだった。
 少年は、物心つく時から、育ての親と呼べる恩人の許で暮らしていた。一度も、この場所からは出たことはない。唯一、外を感じることができるのは、大量にある本だった。少年は知識を身に付けたが、体験がない。
 少年には夢ができた。
 閉鎖されたこの空間を飛び出し、自由にこの世界をこの目で見てみたい。外の世界では、何があるのか、何が起きているのか、この世の全てを見てみたい。その願望は矛盾された思いにうずもれ、日常を過ごす。
 だが、その願望は少年が思ったこともないような、意外な形で、少年の前に現れた。



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