BRAVE
□三成の努力
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三成の努力
最近、三成様の様子がおかしい。
ある日は、文机に向かって大量の文献や資料を読んでいて…
「三成様、何を調べていらっしゃるのですか?」
「い、いや!別にたいしたことではないんだ。」
声を掛ければ肩をビクッと震わせて、読んでいた資料をサッと隠してしまう。
ある日は…
「な、なんですか、この牛の数…!」
「あ、あはは…牛車を増やそうかと思っているのだ!」
「メスばかり、こんなにですか…?」
何十頭という雌牛を城に抱え込んだり、
そして…
「三成様…って、早っ!もうお休みになられるのですか!?」
「あ、ああ…。今日はもう疲れた。」
「昨日もでしたよね…っていうか、ここ数日ずっとです!まさか、どこか具合でも悪いのですか…?」
「い、いや!決してそんなことはない!問題ないぞ!じゃあ、私は寝る!下がっていいぞ。」
そういって襖を閉めてしまい、かなり早いご就寝。
何をお考えなのか全くわからない。
「何か困っているのなら、教えて下されば良いのに…。」
そんな三成様の不思議な行動がひと月ほど続いたある日。
「三成殿の様子がおかしい…?」
「はい…。」
私は三成様に会いに来られた直江兼続様に、三成様の一連の不可解な行動を話した。
「と、いうことなんです…。私、何かしてしまったのでしょうか…。」
すると、兼続様は肩を震わせながら静かに笑い出した。
「ああ…なるほど。大丈夫です、貴女は何も悪くなどありませんよ。よく言うでしょう?“寝る子は育つ”と…。」
「“寝る子は育つ”、ですか…?」
「兼続!余計なことを言うな!」
私が兼続様の言葉に首を傾げてると、それと同時に話を聞いていたらしい三成様が思いっ切り襖を開け放った。
「おや、違うのですか?低身長を気にして、身長を伸ばそうとしているのかと思ったのですが…。」
「身長を、ですか?」
「〜〜〜っ!」
図星だったようで、三成様は顔を真っ赤にして、その場にドカッと座り込んだ。
でも、特別低い訳でもないのにどうして…。
「さて、誤解も解けたようですし、私はおいとま致しましょう。私の用件はまた改めてでかまいませんので。失礼。」
兼続様は面白そうに肩を震わせながら、一礼をして帰っていった。
三成様は恨めしそうに兼続様が去っていった方を見て盛大にため息をついた。
「全く…あいつは…!」
「三成様、どうして身長を…?」
私が不思議そうに問い掛けると、三成様はさらに顔を真っ赤にして俯いた。
そして、小さく呟いた。
「背の高い男の方が、女子は好みなのだろう…?」
「はい?」
「だから!背が高い男の方が魅力があるのだろうと思ったのだ!」
三成様の言動に呆気に取られた私は、ただ目を丸くして彼を見つめていた。
「兼続もそうだが、幸村も六郎も背が高いだろう?おまえも、あのくらいの身長がある男の方が好きなのではないかと思って…。」
三成様は恥ずかしいのか、説明している声がどんどん小さくなっていく。
要するに、私のためを思ってのことらしい。
未だに熱の冷めない顔を俯かせている三成様が、すごく愛しく感じて、私は彼の頭を引き寄せ抱きしめた。
「私は、ありのままの三成様をお慕いしているのです。身長なんて関係ありません。」
「そ、そうなのか…?」
「はい。だから、このままの三成様でいて下さい…。」
「はぁ…私のはやとちりだったな…。心配を掛けた…。」
三成様は申し訳なさそうに言うと、優しい口づけを私に落とした。
私を愛してくれているからこその彼の今までの行動がとても愛しく感じて、彼の背に腕を回し、その口づけによいしれた。