BRAVE
□七隈の自制心
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七隈の自制心
久々に上田を訪れると、姫様が散歩に出ようと誘って下さったので二人で城外に散歩に出かけた。
何ヵ月かぶりに会った彼女は幾分か大人びていたが、私が好きな彼女の笑顔は昔と変わることなく、私を安心させてくれた。
「いいお天気ですね〜。」
「ええ、少し肌寒いですが…。姫様、寒くなりましたら早々に城へ戻りましょう。お風邪を召されては大変です。」
兄上もいなく、二人きりなのはとても嬉しいのだが、もしものことがあっては困る。
私がそういうと、姫様は優しく微笑んだ。
「はい、わかりました。ところで七隈。」
「はい、何でしょうか。」
「沼田に可愛い女の子はいるのですか?」
「は…?」
彼女の突然の質問に呆気にとられる。
女子…?
彼女の質問の意図がつかめない。
私が意図を掴めてないと悟ったのか、姫様はずいっと私に近づき、下から見上げる。
「ですから!女の子です!女の子!」
年頃の割りに背が低い姫様は、私の胸辺りがちょうど頭の位地。
思わず抱きしめたくなる衝動を抑え、ぐっと体に力をいれた。
「姫様は何が仰りたいのですか…?」
「だから!好きな方や恋人はいらっしゃらないのですか!?」
姫様のその一言に思わず固まる。
好きな人…?
恋人…?
私の気持ちに全く気付いていないのは知っていたが、未だに気付いて頂けていないとは…。
私の答えを目をキラキラさせて待っている姫様。
その可愛らしさと下から見上げられるという状況に必要以上に胸が高鳴る。
私は大きく息を吐くと、姫様と視線を合わせるように少し屈む。
「恋人はおりません。しかし、お慕いしている方はおります。」
その一言でパッと花が咲いたような期待と喜びに満ちた笑顔を浮かべる。
「どなたですか!?私、七隈の為なら協力は惜しみません!!」
私の手をとり、キラキラと答えを待つ姫様。
私は大きくため息を吐くと、そっと触れるだけの口付けをした。
姫様はしばらく呆然としていたが、状況を理解した途端、真っ赤になり口を両手で抑える。
そんな彼女が愛しくて、そっと抱きしめる。
「お答えしましょう…。私がお慕いしていう方は、貴女です、姫様…。」
「え…?」
「お慕いしております…。初めて会った、あの日から…。」
真っ赤な彼女の頬を撫でる。
拒否されないところを見ると、期待してもいいのだろうか。
自制心がきかなくなる。
私は再び口付ける。深く深く、彼女の中に私を刻み込むように。