BRAVE

□六郎の葛藤
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六郎の葛藤

ある日、話があるからと姫様に呼ばれ、彼女の部屋を訪ねた。
女性らしい華やかな香りがする彼女の部屋。
訪れることは多々あるが、そのたび胸が高鳴るのを抑える。


「姫様、お話とは何でしょうか。」


長居したいのは山々だが、私にも職務があるため単刀直入に聞く。
すると彼女はにっこりと微笑み、私に数枚の紙を差し出した。


「これどうぞ。」

「これは…人相描き、ですか?」


手渡された紙を見ると、どこかの姫君と思われる方々の人相描きだった。
姫様のご友人だろうか。


「この方々は…?」

「誰がお好みですか!?」

「は…?」


好みとは…?
姫様の問の意図がわからず、首を傾げた。
彼女の目は、何故かキラキラと輝いている。


「だから!その子たちの中に、六郎の好みの女の子はいました?」

「は!?な、何を突然…!」


姫様の言葉に驚き、動揺し、思わず大きな声が出る。
姫様は、人相描きを私から奪うようにとると畳の上に並べた。
そして、一人ずつ解説を始める。


「この子は、奥州の方の姫で、すごく可愛くて舞踊が上手なの!この子は、甲斐の方の姫で、女の子らしくて美しい方なのに武術にも長けています。そして、この子は…」

「ひ、姫様…?私にこんな話をしてどうしろと…?」


意気揚々と紹介を続ける姫様の話を遮り、尋ねた。
すると、彼女はとても優しく微笑み、衝撃的な一言を放つ。


「私、六郎の恋人候補を探してあげたいんです!!」

「は…?」

「六郎は、幸村兄上のために毎日尽くしてくれています。兄上が女遊びをしていても、六郎は全く興味がないというように振る舞っていますが、そんなことはないと思うんです!」


力説する姫様はずいっと私に近づくとぎゅっと私の両手を握った。


「六郎だっていい年頃だもの!恋仲の一人や二人、必要です!」

「いえ…姫様、私は…。」

「遠慮なんていりません!!私と貴方の仲ではありませんか。貴方が幸せになってくれるなら、私は協力を惜しみません!!」


キラキラと輝いている彼女がまぶしい。
私のためを思ってくれているのは嬉しい。
だが、彼女は一つ勘違いをしている。
私が恋人を作らない理由は彼女がいるから。
せっかく協力して下さるというのだから、協力していただこう。


「姫様のせっかくのご厚意です。では…。」


そう言って、彼女の頬に手を当て、握られていた手をぐっと力を込め、私の方へと引いた。
バランスを崩した彼女は私の胸に倒れ込む。


「ろ、六郎…?」

「今、この腕の中にいる方がいいです。」

「へ…?」


姫様は、きょとんとして私を見上げる。
まだ状況が飲み込めていない様子だ。
そんな表情も愛しくて、私はそっと彼女に口付けた。


「貴女がいるから、他の女性に興味はないのですよ…。姫様…。」


そう囁くと、やっと状況を理解した彼女は顔を真っ赤にした。

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