BRAVE
□佐助の優越
1ページ/1ページ
佐助の優越
任務から帰ってきたら、彼女が才蔵と楽しそうに話をしていた。
「それじゃあダメですよ、才蔵さん!」
「うるせーよ。」
口では嫌がる言葉を言っているけど、彼女を見る才蔵の目は優しい。
その眼差しにイラッとする。
そろそろ声を掛けようかと一歩踏み出そうとした。
その時…
「そろそろ佐助くんの任務も終わる頃でしょうか。」
「あ?あー…どうだろうな。」
「今日は森でウサギさんの赤ちゃんを見に行く約束をしているんです!」
頬をほんのり朱く染めて、胸の前で両手を合わせて楽しそうに自分との約束を話す彼女。
才蔵は、ため息をつきながら頭をガシガシとかいている。
ちょっとした優越感。
「おまえ、本当にあの猿が好きだよな。」
「はいっ!大好きですっ!」
才蔵の言葉に躊躇いもなく頷き、満面の笑みで答える彼女。
嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混ざり合う。
今の自分の顔はかなりにやけていると思う。
出るに出られなくなり、どうしたものかと戸惑っていると、それに気付いてか、才蔵がまた盛大にため息をついた。
「それ、本人に聞かせてやれよ。」
「え?」
そう言って才蔵はその場から姿を消した。
余計なことをと思いながらも、隠れていた物陰から彼女の前へと姿を現す。
「佐助くん!お帰りなさい!」
「ただいま。」
自分が隠れていたことに気付いていなかったのか、またもや満面の笑みで自分を迎えてくれる。
そんな彼女に胸の鼓動は高鳴るばかり。
「大事、ない?」
「はい!佐助くんは?」
「無問題。」
「えっと…何かいいことありました?」
「何故?」
「何か嬉しそうです。」
彼女が優しい笑顔で自分を見つめる。
嬉しそうに見えるのなら、それは彼女が側にいるから。
それを上手く言葉に出来なくて、彼女の細い方を抱き寄せた。
「側にいるだけで、我、至福…。」
「佐助くん…。大好きですっ…。」
ぎゅっと抱きしめ返してくれる細い腕と小さな手の感触に頬が緩むのを感じる。
「我も大好き。」
そういって抱きしめ返すのが今の自分の精一杯。
自分だけじゃなく、誰にでも自分のことが好きだと言ってくれる彼女を絶対に手放したくないと思った。