hakushu room
□拍手小説G『はんぐりぃすぱいだぁ』
1ページ/1ページ
『はんぐりぃ・すぱいだぁC』
スザクとルルーシュが初めて話をしてから1週間ほどがすぎた。
スザクは、父ゲンブに呼び出され、父の書斎に来ていた。
「スザク、最近ユーフェミアとの仲はどうだ?」
「?いたって良好です、父さん。」
そうか、とゲンブは大きく息を吸った。
「最近、良からぬ話を耳にした。お前、またひまわり畑へ行っているのか?」
「!…はい。」
ゲンブはどうやら思っていた通りの回答が返ってきたようで、また大きくため息をついた後、立ち上がり、スザクの肩に手を置いた。
「蜘蛛は危険だ、魅了されると冷たい土深くその身を連れこまれる。」
スザクは父の手を振り払い、睨み付ける。
「なんでっ!皆が皆、蜘蛛全員が悪い奴なわけじゃないでしょ!?
皆、打ち解ける努力もしないで他族を危険扱いするの?
、僕らが歩み寄れば、きっと彼らとも…。」
「スザクっ!!」
ゲンブの怒声に、スザクはビクッと肩を揺らせたが、怒りの威勢はそのままだ。
「蜘蛛とは、お前が思っているほど優しい存在ではない。
いや、お前は世界自体を甘く見すぎだ。
その生易しい感情は捨てなさい、
蜘蛛は蝶を狩るもの、
分かりあうなど、不可能なのだ。」
声が出ない。
反撃の言葉さえつづれない唇を噛みしめて、スザクは無言で父に背を向けた。
飛び去った先は、どこに続くのか分からないけど、花畑には、いられなかった。
「…っ……ルルーシュ、ルルーシュぅぅ…」
何で、皆分かってくれないのか。
それは先入観だって事を。
「本当に、ルルーシュは、いい人なのに…。」
ルルーシュの優しい声を聞けば、父さんも少しは考えを変えてくれるかもしれない。
けど、蜘蛛であるルルーシュを連れて花畑に帰れば、皆先の先入観で怖がるかもしれない。
理解や共存には時間がかかるし、ルルーシュも来てくれるか―。
考えを巡らせていると、スザクの腕をいきなりつかんだ者がいた。
「Σっジノ。」
「どこに行くんだ、スザク。」
何でジノがここに…。
「ちょっと、ブラブラ飛んでるだけ…」
「ブラブラなわりには、ひまわり畑へ向かっているように見えたけど。」
「……」
黙るスザクにジノは言った。
「今日から俺はお前を見張るから。」
「Σっ?見張る?何でっ」
ジノはスザクの腕をつかんだまま、花畑の方へと引いて行く。
「ジノっ何でっ」
「お前はユーフェミア様と結婚する、モンシロ一族の大事な跡取りだ。
蜘蛛何かと接触して、万一があったら事だ。
おじ様の言いつけだからな、我慢しろ。」
「父さんが!?
ジノ、離してっ!」
ルルーシュ、ルルーシュ、スザクはひまわり畑の方へ懸命に手を伸ばした。
「何で、皆蜘蛛を毛嫌いするんだっ。確かに、悪い奴だっているよ。
でも、彼はっ」
「まさか、手遅れではあるまいな。」
「おじ様、それはまだ大丈夫だと思われます。
スザクはその蜘蛛の姿を見たわけではなく、声だけを聞いていただけのようですし。」
なぜか自分達の状況に詳しいジノに不信感をもったスザクは―。
「なんで、そんな事を…あの時、ジノ、君はいたのか!?」
「あぁ、たまたまだけどね。
これは一大事だと、おじ様にお知らせした。」
「父さんっ僕の話を聞いて、彼に会ってみて下さい。
本当に悪い奴じゃないんです。」
「―毒とは、姿無く空中に舞い、知らぬ間に体内に入り込んで中から犯していくもの―
蜘蛛に魅了されるとは、まさに―毒だ―」
暗い地下牢の灯かりでゲンブの顔はさらに影を増す。
地下牢に、スザクは独り取り残された。
「ルルーシュ…」
涙腺は、自分には無いと思った。
つづく…