hakushu room
□拍手小説F『はんぐりぃすぱいだぁ』
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『はんぐりぃすぱいだぁB』
ルルーシュは、一人になったスザクの後ろに静かに立った。
葉っぱで顔は見えないようにした。
こんなに近くに来たのはあの日以来だ。
ルルーシュは声をかけるか迷い、ただスザクの横顔を見つめていると、視線に気付いたのかスザクがルルーシュの方を振り向いた。
「煤Iき、君はこの間、僕を助けてくれた人っ。」
「えっ!いや、ちがってか何で俺だと…」
スザクはパァと沈んでいた顔を輝かせ、立ち上がった。
「やっぱり、この前聞いた声と一緒だ。
この間は声と足しか見えなくて、でも凄く綺麗な声だったから覚えていたんだ。
こっち来て、君と話をしたかったんだ。」
「だめだっ!!」
ルルーシュが声を荒げたので、スザクはビクッと体を震わせた。
「…俺は、蜘蛛だぞ。」
葉っぱで見えないけど、動揺しているのが分かる。
そりゃそうだ。自分は蝶、そして、やはりユーフェミアの言っていた通り彼は蜘蛛だった。
蝶が蜘蛛と話をしたいだなんて、おかしく思われて当たり前だ。
「でも…君は助けてくれたじゃないか。蜘蛛だからって、蝶と仲良くなれないなんて事ないよ。
そうだろ?」
柔らかい笑顔で、スザクは右手を差し出した。
キラキラして、ルルーシュの目が眩む。
だが、やはり―――
「は、話位なら、してもいい…だが―お互いそこから動かないで、だ。」
それから、日が暮れるまで話をした。
お互いの好きな物やお気に入りの場所。
夕日がスザクの顔を彫りを深くさせても、その緑の瞳が輝いていて目をそらせない。
ルルーシュにとって、ただ、ただ幸せだった。
それは、冷たい土しか知らなかった彼が、初めて感じた暖かさだった。
「見たか、あれスザクじゃないか?」
「もしかして、蜘蛛…?」
パシャ。
小さく花畑に響いたシャッター音。
「(ん?…何でだろ、楽しいのに―――)」
何でこんなに胸が痛いのか。
「…どうした?」
「っ。ううん。もう遅いね、帰らなきゃ。
――また、会ってくれる?」
名残惜しそうにスザクは次を求めた。
ルルーシュは、今だ顔を出さないが、
「あぁ…」
ちょっと曖昧な返事。
だけど、次はあるみたいだから、胸を撫でおろしたスザクは、じゃぁと飛びたとうとした時。
「スザクっ。こ、ここで、また…明日。」
そう言った後のスザクの笑顔が瞳にやきついて、目が潰れてしまうかと思ったルルーシュは、無意識に葉っぱから手を離した。
飛び立った後だったから、顔は見られずにすんだ。
ルルーシュは自分の唇を指で触った。
(―名前、初めて呼んだ…――)
夕暮れ時、スザクが無事に家路につく事を、祈った。