hakushu room

□拍手小説E「はんぐりぃ・すぱいだぁ」
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 ルルーシュは駆けた。
蝶族の住む、丘の上の花畑まで。
だが、花畑の一歩手前で立ち止まる。はたして行ってどうしようというのか―
スザクを、拐って逃げようとでもいうのか。まさか、そんな事…。

ルルーシュは、花畑の外れにある大木から、蝶達が飛び回るのをただ見ている事しか出来なかった。






「ス〜ザク。」

ピンクの髪に、美しい模様の揚羽蝶・ユーフェミアは、花びらに座るスザクに明るく声をかけた。

「ユフィ…」

「最近、とても浮かない顔だわ。何かあったの?」

スザクはシュンっと項垂れた。
「ユフィは…ヒマワリ畑の下に行った事ある?」

「まさかっ!あそこは蜘蛛族の住む場所だもの。お姉さまにも、ヒマワリ畑には近づかないように言われているもの。蜘蛛は恐ろしいのよ…」

ユーフェミアはブンブンと首を横にふった。

「でも、この前…僕がヒマワリの種のベッドから落ちた時、助けてくれた人がいたんだ。」

「それは蜘蛛ではないのじゃなくて?
おかしいわよ、蜘蛛が蝶を助けるなんて。」

「ううん、あそこは土蜘蛛一族の縄張りだもん。間違いない。」

フルフルと首を横にふったスザクの強情さに、ユフィはふ〜とため息をついた。

「スザク、もうヒマワリ畑には近づいてはダメよ。たまたま満腹だったのだわ、その蜘蛛は。
次は無事にはすまないわよ。
結婚式の前にフィアンセを食べられてはたまらないわ。」

スザクに釘をさすと、ユーフェミアはヒラヒラと飛び立って行った。

スザクはヒザを抱えて思い出す。
彼の低く、耳障りのいい声を。
顔は分からないけど、すらりと伸びた細い足がしっかりと大地を踏みしめて…あぁ、そうだ―

あの紅い瞳が、僕を捕らえて―

離さない――――――

つづく…

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