kiriban room

□『青い薔薇』2000hit
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青空が凄く綺麗だったから、僕は昼食時を幾分か過ぎた頃、久しぶりに私服で外に出た。

黒い半そでのシャツにジーパン。
すごくラフな恰好だけど、サングラスをするのだけは忘れてはいけない。

国民の休日な事もあり、そして珍しく公務も無かったから、外に出たけど、人通りの多い街中を歩けば、目につくのは男子学生。
黒い学生服がとくに目についた。
僕はしばらくその学生を見ていた。
本屋の店先で立ち読みをしている彼は、黒くてサラサラの髪が風に揺れると、少し煩わしそうに髪を耳にかけた。

そんな彼を見て、ふいに懐かしくなる。

すると、同じ制服を着た茶色い髪の男子学生が彼にかけよってきた。
何か楽しそうに話を始めると、茶色い髪の男子学生は何か食べ物が入っているのだろう袋を上下にふりながら、近くのベンチを指さした。
時間はもうすぐ3時半。
どうやら今から買い食いタイムらしい。
随分ブラブラしていたみたいだ。

そういえば、彼ともあんな風に休日に生徒会の買い出しに出掛けたっけ。

僕は街中を抜けて最近出来たガーデンパークに立ち寄った。
今は丁度薔薇の季節。
回りはカップルや家族連れで、些か一人者の僕は浮き気味だ。

回りは小ぶりの白い薔薇や、大輪のピンクの薔薇。
色とりどりの薔薇が咲き乱れて…。
濃い薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。
その中でも取り分け甘い香りを放つ薔薇があった。

不可能の代名詞とされていた青い薔薇。
これを見るのは二度目だ。



いつだったかな、ここに来たのは…。




薔薇の華と誰かが重なる。


そんな時、一陣の風が僕を通り過ぎていった。

それは先ほどの学生の彼らが連れてきた風だった。

青い薔薇の花壇の前ではしゃぐ彼らの楽しそうな事。
すると茶色い髪の男子学生がふいにキョロキョロしだした。
どうしたのかな?と見ていると、誰にも見られていないと思ったのか、青い薔薇の華をもぎ取り黒い髪の男子学生の耳元に飾り付けた。
綺麗〜、とか、可愛い〜、とかちょっと女子学生っぽい会話をしている彼らに気づいた警備員が寄って来た。
ヤバいとばかりに茶色い髪の男子学生は黒い髪の男子学生の手を引いて、走り出した。
来た時のように、また風を引き連れて彼らは去っていった。

楽しそうに、どこかに駆けて行く二人。



いつだったか、僕らもこうして出かけたね。

青い薔薇の華が、凄く君みたいで、僕はその華を君の耳元に飾った。
君はいつものセリフで、僕をバカだって言ったね。
そう言った君の頬が薔薇色で、何だか僕まで頬を赤らめたっけ。


もう、随分前の記憶。


時間も、場所も、もうほとんどがおぼろげな記憶…。
いつもなら思い出す事もないのに、こんな青い空の下にいるとそれが鮮明になる。

ほら、まるで君が目の前にいるみたいに。


ほら、風がふいたよ。
花吹雪と共に、黒い髪が揺れる。



やっと、僕はもう一度やり直すチャンスを与えられた。

差し出された白い手を、今度は間違う事なく握れる瞬間を。














晴れた青い空の下、それは50年前と変わらずに咲き続けている。

あの日にした約束を遂げに来たように、君はまた現れた。

甘い香りと青い花びらと共に、あの日と同じ風にふかれて。



「行こうか、スザク」

















ずっと待っていた。
僕の青い薔薇。
今度は間違えない、今度こそ君の手を取ろう。

そして塗り替えるんだ、不可能の代名詞を。

青い薔薇は、不可能を可能に変える、代名詞なのだと。

だってこの華は、君の華。
不可能を可能に変えた、王の華なのだから。





朱色の空の下、広がった訃報。
満開の青い薔薇の華々に抱かれて、英雄の死に顔は安らかだったという。



それは…遠い、遠い記憶…
過去(いつ)の時の記憶か…

いつか来る、未来(とき)の記憶か…







『青い薔薇』









ずっと待っていた。
俺の幹。
その棘は王(おれ)を守る剣。
今度は間違えない、今度こそお前を優しく抱きしめよう。





俺達は、二人でヒトツなんだ。










Eternity…
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