小説

□リナサイド
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ゼロスがあたしを避けている。どうせまた、どうしようもないことで悩んでいるのだろう。お互いがお互いを好きで、でもそれだけで甘い時間を過ごせるほど、あたしたちは生やさしい関係ではないのだ。
それでもあたしは、悩みながらも出してきたその答えを手放すつもりはなかった。
息を深く吸い込んで覚悟を決めると、いつものように虚空に向かってゼロスを呼び出した。

仮面に似た笑顔で現れたゼロスは、無言であたしをジッと見つめる。何から伝えれば良いものか。そう考えていた矢先にあたしはベッドに押し倒されていた。

「ーーーっつ んんっ」
深く口付けられ声が漏れる。緊張で思わず縮こまるあたしを見透かした様にゼロスが耳元で甘く囁く。
「いま、良くしてあげますよ」
そう言ってからは、ずっと無言でひたすらにあたしを求めてくる。だけど、どこか寂しそうで、不安そうで、今にも泣き出すんじゃないかとさえ思った。あたしはただ、慰める様にゼロスの背にそっと手を伸ばした。

ふと、ゼロスの動きが止まりこちらを見ている。
「ゼロス?」
名前を呼ぶとさも申し訳なさそうな顔で訪ねてくる。
「…その…怒ってないんですか?こんなに無理矢理したのに」
あたしは気が抜けて半分笑いながら答えた。
「あたしが誘ったのよ。だからあんたはウジウジ悩んで無いでさっさと元気になりなさい」
「好きでいいんですか?」
「あたしが好きでも無い奴にこんな事許すと思う?」
「はい」
そこまで言ってやっと安心したのか、あたしを優しく抱きしめるゼロス。
「もう離しません」
「うん」
「好きですリナさん」
「うん」
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