ドM症候群Book
□10
1ページ/1ページ
「いいじゃん、ね?」
彼は水道で顔を洗っていた。
真夏とはいかないが、そろそろ夏休み。 スポーツをしたら、いくら蓮二でも汗く らいかくだろう。
ってか、その前に長ジャージ脱げよ、暑苦しい。
「暑苦しくて悪かったな」
「ひぃい!勝手に心読まない d…っぁ!!ウソです、今のはウー ソー!!」
「隠しても無駄だ。口に出ていたぞ」
冷や汗を思いっきりかいて、わたわたし た。
彼は全くもって平然としていた。
もしかして、ずっと言われてたのかな?
蛇口を絞めた彼に向ってタオルを差し出す。
「で?何がいいんだ?」
タオルで顔を拭きながら、水道から私の ほうに向きなおった。
「いや、だから――……」
.
.
.
一通り話終えると、口を固く結んだまま 黙っている彼。
「っていうこと。ね?協力しようよ!」
「却下」
『なんで』と聞こうとする前に、蓮二は 後ろの茂みに向かって言葉を発した。
蓮二もとうとう頭のネジが……
「いい加減にしろ、貞治」
「え?」
頭のネジが…とかいってごめんなさい。
言葉通り茂みからぬっ
と乾さんが出てきた。
しかも不敵な笑みを浮かべている……こわい。
「ふっふっふっふっふ……今の話、聞か せてもらった!」
ガサガサ、と音をたてながらこちらに歩み寄る。
蓮二はというと、物凄くめんどくさそう な顔をしている。
「で、用件はなんだ」
「朱鷺原さん、俺は協力しよう。いや、 させてくれ!」
「本当ですか?!」
うわー、さっき………というか現在進行 形で気持ち悪いと思ってしまってすみま せん。
乾さん、やっぱりいい人!
実を言うと乾さんは、常々海堂くん達の ことをどうにかしたいと思っていたらしい。
「海堂くんも、好き──なんですよ ね?」
「あぁ、データ上はね」
「データ上は?………」
「海堂は気付いてない。だからやっかい で──」
乾さんと話し込んでしまった。
後ろを振り向くと、蓮二の背中が見えた。
「あ、ねぇ!ほんとに協力、しない の?」
「しない。やりたいなら勝手にやってい ろ」
そのまま去っていく彼に向かって、口を 尖らせた。
なんて冷たい人なんだ。
まぁ、私には乾さんがついてるし! 困るこ
とはなさそう!
そして、"後輩の恋を応援し隊"が 結成された土曜日の午前。
喜べ、我々は青春の まっただ中にある!
(青い春を謳歌しています!!)
**********
珍しく空気な蓮二www