ドM症候群Book

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「おはよ、柳っ!」
「おはよう、若菜。」



名前を呼ばれ、恥ずかしい半面彼の事を名前で呼ばなければいけない気がして、焦っていた。
そっか、昨日…私は彼の彼女になったのか。



「あぁそっか、れ、蓮二…」
「無理に呼ばなくてもいいんだぞ。」
「え、嫌っ!呼ぶよっ!」
「そんなに必死にならなくても。お前の好きなようにするといい。」
「うん…」



なんだか優しい雰囲気の彼に違和感を覚える。
『好きなようにするといい』って…なんか、凄い良い人じゃん?



「なんかさ、蓮二優しくなったね。」
「…俺は元々優しいんだが。優しい俺は嫌いか?」



クス、と笑うように口元に手を添えていた。
私はそれを見て、首を横に振った。



「ううん!大歓迎!」



と笑顔で言った。
……だが、やはりいつもと違うと接し方も変わるわけで。
度々目を彼に向けると、柔らかく、とても優しそうな、笑顔で返される。
…うーん……やっぱり変だなぁ…。



「……何となく…調子狂うなぁ…」



ぴくり。
彼の耳が動いた気がした。
ボソッと呟いたつもりなのに、絶対聞いてた。
だって絶対耳ダンボじゃん!
すると優しかった顔
から段々怪しげな顔つきに変わっていった。



「…そうか…。お前は罵倒されている方が好きなんだな。」
「え、違っ…」
「選択肢は"はい"か"Yes"だ。」
「理不尽!」



あれ?
何だが感覚が戻ってきた気がする。
やっぱり優しすぎるのも考え物だね。
だけどさ…



「何をしている。ほら、早く3年の廊下を掃除してこい。」
「…な、何で!?」
「部の評判が上がるからだ。それと俺が廊下掃除だからだ。」
「理不尽!」
「"はい"か"Yes"だろう?」
「………………は…い、わかりました!行きます!行かせていただきます!」



ドSすぎるのも、考え物です…。
嫌みったらしく答えたのに、全然気にしてない。
私は走って3年の廊下に向かうのだった。





 
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