ドM症候群Book

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「でさ、柳くんはどうなったわけ?」
「朱鷺原さんと一年の西村さんだっけ?文化祭の時は絶対に朱鷺原さんと付き合ってると思ったんだけどなぁ…。」
「いや、あれはただの事故で、本当は西村さんと付き合ってるんでしょ。」
「まぁ、そっちが妥当だよね。」
「あたしが男だったら迷わず西村さんだしね。」
「ってことは、確実西村さんじゃない?そう考えると、柳くんが朱鷺原さん好きになるとか、ありえなさそうだねー。」



ある教室での女子生徒の噂話に、足を止めて聞いてしまった。
まさか、自分の事を言われているとは。
確かに、私が男でも麗華ちゃんを選ぶと思うのだが。
けど、柳は私の事を――好きって…――言ってくれたもん…。
左腕をキュッと握ると、鈍い痛みが走った。
ここ怪我してるんだった…。
手首まで巻いてある包帯を見て、隠すように袖を伸ばした。



「……朱鷺原…?」
「…っ…や……なぎっ?!」



いきなり声をかけられ、振り向いた。
久しぶりだ、こんなに近くで柳を見るのは。



「……」



咄嗟に掴ん
だ自分の左手に包帯が撒かれているのに気付くと、視線から逃れるように背に隠した。
顔をそらす。
何も聞かないで、何も、聞かないで。



「…どうしたんだ、その…傷…。」



すぐに明るい顔を見せて、『家で転んだんだ』とだけ言うと柳は少し黙り込んだ。



「柳。一個だけ聞いていい?」
「なんだ。」



静かに答える彼に、少し顔をそらす。
私の質問に、答えてくれるだろうか。



「……私の事、好き?」




 
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