テニスの王子様 Book

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「ごめん、先帰ってて!私まだ仕事あるから!」




そういって友達に手を振った。
最近は色々な行事が多すぎて、生徒会も忙しいのだ。
生徒会役員の私は一人生徒会室にこもっていた。
山のようにつまれた書類……。
その書類で文化祭のパンフレットを作らなければいけないらしい。
私は数枚の紙を取って、ホチキスで止めていく。




「仕事熱心だな。」

「……ぁ、柳!」




腕を組みながらドアにもたれ掛かっているのは、同じく生徒会役員の柳蓮二だ。
ヤツは頭が良くて運動神経もいいといった完璧なヤツだが、完璧過ぎて怖いという生徒…そして先生も多い。
私は何とも思わないけど。




「暇なら手伝ってよ。」

「断る。」

「はっ?!なんで!」

「俺がお前を手伝って得る利益はないからだ。」

「柳のくせに見返り求めるのかっ!」

「どういう意味だ。」




柳は全然欲がなさそうに見えるのは私だけか。
盛大にため息をついた。
柳はそれも構わず、私の前のイスに座って本を読みはじめた。





「早くしないと雨が降るぞ。」

「そういや、朝言ってたなぁ…」

「因みに雷雨だそうだ。」

「ら・い・う!?」

「何だ?」

「……何でもないです…。」




雷が苦手…なんて口が裂けても言えはしない。
雷雨ならば、尚更早く終わらせたい。
早く終わらせるには…やっぱり…!




「……ねぇ…柳……。」

「なんだ。」

「本読むくらいなら、手伝って!」

「それが人にものを頼む態度か?」

「ってか、別にここで本読まなくても、図書室行きなよ。」

「俺がここで読みたいんだ。俺が邪魔ならお前が動けばいいだろう。」




何て言うー理不尽なことを言うんだ、彼は。
こんなひどいことを言う彼にも、ファンがいると言うのが謎だ。
去年のバレンタインもたくさんのチョコをもらっていたっけ。
そんなことを考えながらホチキスを動かしていった。
あっという間に時間が経ち、空模様が怪しくなってきた頃、柳がため息と共に口を開いた。




「もう5時か。半分かせ。」

「手伝ってくれんの?!」

「お前は要領が悪いからな。何故1時間以上もかかる。俺は30分で終わったぞ。」




今まで手伝って、といっても手伝ってくれなかったやつが、よく言うよ。
最初から手伝ってくれたらよかったのに…。
柳は私が渡した書類をものすごい早さでまとめていった。
ポカンとしていると『手を動かせ』と怒られた。
柳の仕事っぷりには正直驚かされた。
お前は魔法使いか、と言いたいくらいだ。





やっと仕事も終わり、帰り支度をしながら外に目をやる。
いつもはもう真っ暗と言っていいほど暗い空だが、今日だけは緑がかった色で無駄に明るいのだ。




「…ぅ…空が変な色……。」

「雷雨…だからな。」

「柳、どうにかならないの?」

「俺は魔法使いか何かか。」

「違うの?」

「……お前には付き合い切れないな…」




はぁ、と柳がため息をつき、話しはじめた時…────。
窓の外が怪しく光った。
雲にはくっきりと稲妻な形が…。




「ぎぃやぁぁぁぁあ!!!!!」

「……っ…!」





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