ドM症候群Book

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「何々ー?今日も柳くんと帰るの〜?アツイねぇ〜」
「…ま、まぁ…」




友達はこういうけれど、実際は全くアツイなんてものはない。
帰り道、永遠と数学の公式や英語の文法、古文の読み方…etcを叩き込まれるのだ。
おかげで昔よりは頭がよくなったけれど。
しかも今日は…


『テスト対策をするから必ず来い』


だなんて、ムードも何もあったもんじゃない。



「あれ、柳は…?」



キョロキョロと辺りを見回すが、見つからない。



「朱鷺原先輩。」
「おや、赤也くんではないか。赤也も勉強する?」
「何言ってんスか。で?柳先輩は?」
「あっれ、赤也も柳に用?見つからないんだよねー。」



すると赤也がわざとらしく、『あぁぁ〜!!』っと叫んだ。
何、と思った瞬間には腕を引っ張られて、玄関とは真逆の方へ走っていた。


 
「あ、赤也ぁあ?!何。」
「い、いや、何でもないッスよ。あぁ、そういえば、柳先輩、今日行けないって言ってました。」
「え?あ、そう…。」



一瞬でも『一緒に帰りたかった』と思ってしまって、頭を振る。
違う違う!勉強なんてしたくないもんね!



「じゃあ、帰ろ…」
「い!今はやめた方が…」
「え?」
「いやいや、俺、先輩に勉強、教えて欲しいんスよ!ね、ね、いいでしょ!」



珍しく勉強をねだってくる赤也に、真田の説教もついに実を結んだか……とどこか感慨深いものがあった。



「よぅし!じゃ、図書室でやろう!」
「うぃーっす!」



私はその時、何故赤也が叫んで私を“その場”から離したのか、知るよしもなかった。
その時赤也の目に写ったのが、柳と麗華ちゃんの後ろ姿だった…なんて事も……。



私は何も知らなかった。






 
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