ドM症候群Book

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「柳ーー!!」
「…何だ、煩いぞ。」



私が叫びながらF組の近くへ行くと、柳はやはり呆れたように本から顔をあげる。
本から顔をあげてくれるようになったのは、少しでも進歩しているという証拠なのだろう。
そして私は彼にビシッとプリントを見せる。



「あのね!この前教えて貰ったところ、出来たんだ!!ほら、点数上がった!!!」



そのプリントはテストのようで。
右上には、66点と書かれていた。



「…常に40点台のお前にしてはよくやったな。」
「!!うん!柳のおかg…………」



珍しく褒めてくれたので、満面の笑顔で返そうとしたが…
その心意気も虚しく、後ろから何者かに押され顔面から壁に激突。
ガンッ



「…大丈夫か?」



柳の声が聞こえる。
嘘!あの柳が心配してくれてる?!
嬉しくなってグリンっと首を回す。



「やな……っ」


 
すると、目に入ってくるのは想像していたものと違う光景だった。
柳が手を差しのべているのは、私の後ろに倒れている女子生徒。



「あ、す、すみません、ありがとうございます」



私にぶつかって来たであろう女子生徒は柳の手を取り、立ち上がった。
髪は少し茶色がかかっていて、顔立ちはとても綺麗だ。
全体的に華奢でこう言う子の事を、お姫様と言うべきなのだろう。
彼女は私に気付くといそいそとこちらを向いた。



「す、すみませんでした…!え〜と、大丈夫ですか…?」
「あ、大丈夫、気にしないで!」



私は赤くなったおでこを擦りながら手を振った。
本当にかわいい子だ……。
だが……彼女の頬が赤くなっていたのは気のせいだろうか。
彼女はもう一度『すみませんでした!』と言うと、パタパタと可愛い効果音が似合いそうな走り方で行ってしまった。



「朱鷺原、血。」
「は?血………?…わぁぁ!」



柳に言われて初めて気付く。
額に血が流れているのだ。
さっき打ったときにでも切れてしまったのだろう…。


…はぁぁ、ついてないなぁ…。





 
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