ドM症候群Book
□05
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「朱鷺原、」
「……………」
柳の『犬』になって、今日で3日目。
惚れたときに見たあの微笑は、今となっては恐怖だ。
今は3年生の廊下で名前を呼ばれた。
聞こえないふりでもしていれば、なんとかなるだろうと思っていた。
甘い。
「おい、」
うつ向き加減に早歩きで行っていた私は、目の前に男子生徒が現れたことに気付かなかった。
頭を上げて……顔が青ざめる…
「俺を無視するとは、いい度胸だな、朱鷺原」
「いや、無視と言うか…その………」
「名前を呼んでもらえるだけありがたいと思え。」
そこまで感謝しなきゃいけないんですか…
なんという事だ。
「は、はぁ。…で…私に何か用ですか?」
「特に用はない。俺が暇なだけだ。」
なーーんだ、それ。
暇なだけって。
もしやあれですか、『暇だから犬と遊ぼう』とかそういうノリですか。
「あのー……柳さんが暇なのはいいんですが、私宿題が…」
「やってないのか。お前の知能は小学生以下だな。」
「す、すいません…。な、なので、早めに終わらせたなぁーと…。」
ふむ、と柳は考えた後…顔を此方に向けた。
表情は…相変わらず分からない。
「俺が教えよう。」
「え゛?!!」
「なんだ、嫌なのか。この俺が教えてやると言っているのに嫌なのか。」
正直言って、嫌です。
ごめんなさい、嫌です。
怖いです、柳さん。
…と思っても口にすると開眼しそうだから、ボソッと『お願いします』と言う。
「何だ、聞こえないぞ。」
しれっと言った彼は絶対に面白がってる!
涼しげな顔して嫌な性格してるなぁ…
仕方がないので、しっかり聞こえるように話す。
「お願いします!」
「違うだろう。他に言うことは?」