テニスの王子様 Book

□丸井ブン太
3ページ/4ページ





サァーと雨が降ってきた。
朝は忙しくて天気予報を見るのを忘れたんだった。と朝の自分に後悔した。
今日に限って急に雨が降るなんて!
近くの図書館に逃げ込むように入った。
…だがまさかの休館日。
仕方がないので、入口で雨宿りすることにした。




「あ〜、ベタベタだー…」




そういいながら、シャツの裾を軽く絞った。
ビチャビチャっと結構な量の水が流れていった。
下を見ていると、バシャバシャっと水を跳ねさせる音が聞こえた。




「いきなり雨ってないだろぃ?!」




雨宿りに来たのだろう。
濡れた髪をかきあげる姿にドキッとした。




「あー、冷てぇ!…あ、お前も雨宿りか?」

「う、うん…」




赤い髪から滴る水は一向に止まる気配がない。
見兼ねた私は、タオルを差し出した。





「よかったら、使って…?」

「マジ!?いいのか?!…サンキュっ!」




わしゃわしゃと髪を拭きだし、『雨、やまねぇな…』と呟いていた。
私は少しだけ、止まなければいい、と思っていた。




「ん?お前、まだ髪濡れてんじゃねぇか!俺が拭いてやるぜぃ!」

「え?!わっ…ちょ………」




阻止することも出来ず、しばらく彼に頭を拭いてもらう形になった。
……なんか複雑。




「女が髪を濡らしたままだなんて、ダメだろぃ?」

「あ、ありがと………」




そんなこんなしているうちに、辺りが明るくなり、雨が上がっていた。
楽しい一時がこれで終わってしまうと思うと、とても寂しくなった。




「……じゃ、気をつけて帰れよ!タオル洗って返すから!!」

「え、あ…うん…!」

「俺、3年B組の丸井ブン太な!!!」





それを叫んで、水溜まりを弾きながら走って行った。



私は名乗らなくてよかったのかなぁ、と思ったが、また会いに行けばいい。


丸井、ブン太か………

珍しい名前。
忘れられなさそう。




いつの間にか顔が綻んでいる私がいた。






今日だけは雨が私の味方
(おかげで、良い出会いがありました。)




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ