テニスの王子様 Book

□丸井ブン太
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「ふぅ」




ため息をつきながら、屋上でごろんと寝転がる。
誰にも邪魔されずに寝るにはここが一番最適だ。


自然と目に入る空。
15年間見てきた空。
皆は綺麗だとか言うけれど、そんなふうに思ったことは一度もなかった。


夕焼けでも夜空でも、雨の空も…。
呼び方はたくさんあるかもしれないが、空は空である。
別に特別綺麗とは思えない。
私には、白黒に見えてしまうのだ。
私は考え方や見方が変なのだろうか…。


考えていると耳に入ってくる扉が開く音。




「んー!!やっぱ外は気持ちいいぜぃ。」




赤い髪をして口をもごもごしている男子生徒。
…確か、クラスの女子が噂してたな…。




「丸井くん…だっけ…」

「うわぁあ!何だ、誰か居たのかよ。」

「ご、ごめん。」




影になって分からなかったのか、私が声を発すると彼は大袈裟に飛びのいた。




「お前もサボり?」

「まぁ、ね。そういう君も?」




あぁ、と軽く頷くと彼は思いっ切り伸びをした。
それから大きなあくびをして…




「気持ちいいなー!」




と叫んだ。
今授業中だけど。
その言葉に続けて“テニス日和だぜぃ”と呟いた。




「テニス部…だったよね、丸井くん。」

「おぅ!俺ダブルスなんだけどさ…、えっと…」




丸井くんはグラウンド側のフェンスに近寄り、動いている人(多分体育)をジッと見ている。




「あ!おい、こっち来てみろぃ!」

「え?」




楽しそうに手招きをする丸井くんに近づいて、彼が見ている方を見てみる。




「あそこ、あそこで走ってるハゲ、俺のダブルスパートナー。」

「あぁ、あのブラジルの…」

「ジャッカル」

「そうそれそれ。」




ジャッカルくんだった。
いつも真田くんに謝ってるイメージがあるんだけどな。
丸井くんはおもむろにすぅ、と息を吸った。





「ジャッカルーーーー!!!!!!」

「Σ!?ま、丸井くん?!」




隣にいる私にはお構いなしに、大声で叫んだ。
ジャッカルくんは、キョロキョロしてから屋上の丸井くんに気付き、あからさまに大きくため息をついていた。
……やっぱ苦労人っぽい。




「な、ウケるだろ、あいつ。」




何がウケるんだろう。
でも、丸井くんの笑顔につられて吹き出してしまう。
散々二人で笑い合った後、さっきのように扉が開く音がした。




「お前らまたサボりかぁあ!!!」

「げ!」




いたのは学校でも怖いと評判の体育教師だった。
“なんでバレたんだ…”と丸井くんは言っているけれど、あれだけ何回も大声を出しているんだから、バレるのは当然だ。




「よし、逃げるぞ!!」

「え、あ、ちょっと…!」




戸惑う私の言葉を無視して、私の手を掴んだ。
彼は私の方を向き、ニコッと笑って見せた。





……陽射しが一気に強くなる。




「綺麗だね」




雲ひとつなく澄んだ青空に、私は呟いた。








(味気ないこの世界に
色をくれたのは貴方だった)








 
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