テニスの王子様 Book

□柳蓮二
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仕事を終わらせ、外に出てみると辺りは真っ暗。




「…あ、早く帰らなきゃ…」




そう思った瞬間、赤也に言われた話が頭を過る。
…入院中の男が…点滴を探して夜な夜な立海へ来るなんて…
あぁ、帰るのが怖くなってきた……
幸村達と早く帰ればよかったな……。
今日は蓮二もいないし……




「どうしよう…」




半泣きになりながら解決策を探す。
『おっ……おばけなんていないさ、おばけなんてうそさ〜』歌を歌ってみたが…余計怖くなってしまった。
するといきなり部室のドアがガチャッっと開いた。




「ギャーー!!!出たぁぁああ!!!」




叫びながら、ノートや鞄を投げつける。
無我夢中だ。
だが、微かに私の名前が聞こえるのは気のせい?




「ナマエ!」





グッと腕を引き付けられ、思わず目を開けてしまった。




「……落ち着け、俺だ。こんな時間まで何をしている?」




そう言うのは見慣れた彼の姿だった。
一気に張り詰めていた体の緊張が解け、彼に抱きつく。




「ふぇ…蓮二ぃ……!!!」

「っ、どうした、何があった…?」

「赤、也がねっ、怖いっ、話を、ね…っ」

「……は?」




ヒックヒックと肩を揺らしながら一生懸命に話す。
話し終わると、呆れたようにため息をつく。




「はぁ、お前はそれを、信じたのか?」

「え…うん…」

「よく考えてみろ。エメラルドグリーン色のパジャマを着ていて、つい最近まで入院していた立海生は誰だ?」




問いかけにまともに答えられない。
その様子を見て、柳はまたもため息をついた。





「幸村精市だ。因みにその話は精市本人が作った話だぞ。」

「え、ていうことは…作り話?」

「あぁ。」




ホッとし過ぎて、逆に赤也に怒りを覚える。
赤也の…馬鹿っ!!!




「ほら、解決しただろう?帰るぞ。」




私は、そう言う彼の斜め後ろを歩いた。
複雑そうな表情をしているのを読まれたのか、蓮二が言葉をサラリとつむぐ。




「……次からは俺に言え。可能な限り、何とかしてやる。」

「…ホント?」

「お前の為ならな。」




そう微笑む彼を見て、自然と顔が熱くなった。




怖い夜道は
(貴方と二人で)







**** オ マ ケ ****


「赤也、おはよう。」

「あ、柳先輩!!」

「赤也は怪談話が好きなんだそうだな。ナマエから聞いた。」

「え?!好きじゃないッスよ!…でも、自分より怖がってる人見るのは好きッスよ!」

「ほう。奇遇だな。俺もだ。そこで赤也、一つ面白い話があるんだが、聞いていかないか?」

「あ、いや、遠慮しときまs…「聞いていくだろう?」

「………は…はい。」







ギィヤァァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!!!!!



と赤也の断末魔が聞こえたのは言うまでもない。





「赤也は面白いな。存分に怖がってくれる。」

「フフ、それは蓮二が言うから余計だよ。あ、そう言えば君、1年の時一時期“立海の歩く怪談話”って言われてたよね。」

「あぁ、あの時は怪談にはまっていた頃だな。一応読んだ本の怪談は全て覚えているぞ。」

「俺は、君が怖いよ。」





 
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