テニスの王子様 Book

□他校
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「…何してんだ」




雪の降る中、その声は真っ直ぐに私の背をさした。
振り替えればそこには、大好きな人がたっている。




「え?見て、雪兎!」




私は、両手で傑作の雪兎をすくい、景吾に見せる。




「…お前、手…」

「へ?」




私の真っ赤になった指先を見て、景吾が驚いたように言った。




「素手で雪触るか、普通!!」

「…だって、今思い付いたんだもん!」

「…お前ってやつは…。」




半分呆れた顔で、真っ赤な私の手を掴んだ。『行くぞ』とだけ言って手を引かれた。
…あ…そう言えば




「あれ、車は?」




景吾がいつも車で来るのに…珍しいな…。




「俺だって毎日車なわけねぇだろ。」




そうなんだ。
でも、私と会う時はいつも車じゃないよね。




「…ここで待ってろ」




私はベンチに座り、ポツリと呟いた。




「景吾の手…つないだの…何年ぶりだろ…」





3年になってから、あんまり話してなかったし…。
部活、大変だったんだ…。
そう思いながら、手を空にかざす。
顔に風が当たって冷たい。




「ほら」




その声と共に頬に暖かいものが触れた。




「ひゃっ!?」

「飲めよ」




そういって渡されたのは、温かい缶コーヒーだった。




「あ…景吾、自販機で缶コーヒー、買えるんだ。意外。」




思わず本音がポロッと出てしまう。
景吾みたいにお金持ちだったら、自販機で缶コーヒーなんて買わないよね。




「おい、それどういう意味だぁ?アーン?」




気に触ったのか、聞き返して来た。
でも私は、ニッコリと笑って答える。




「いえいえ、なんでも。ありがと」





カツンッと缶を開ける。白い湯気がふわふわと立ち上っていく。
景吾は一口飲み、『引き立て』がどーのこーのだの『入れたて』が何だのって、缶コーヒーに対して、文句を言う。
ま、お坊っちゃまは缶コーヒー、飲まないからね。




「…三年間って…短いね…あっという間だったよ。」




本当にあっという間だった。景吾に初めてあった時が昨日のように感じる。




「そーだな」

「…ぃでね」

「あ?」

「景吾は…変わらないでね…」




景吾は予想外の私の言葉に、少し驚いたが静かに返した。




「…お前も…な。」




缶コーヒーが半分になった頃、景吾の手を握った。




「…景吾の手…あったかいね…」




しばらくの間、二人の間に沈黙があった。
すると、白い息を吐きながら…景吾が言った。




「…バーカ、お前の手が冷てぇんだよ。」






その、温かい手が…



そっと握り返してくれる。




空から雪が降ってくる。



それはまるで、天使の羽のような……





空からの贈り物
(言葉では伝えきれない気持ち)







 
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