テニスの王子様 Book

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「わー!そのネイル可愛いー!」

「でしょ、でしょ?」




クラスの女子の声が耳に入ってきた。
目線を下に向け自分の手を見る。
カサカサな手に、短く切った爪。
女らしさのカケラもないなぁ。
3年間、テニス部でマネージャーをして、水場の仕事を毎日のようにしてきた。
努力の結果が、これかぁ。




「どうかしたんですか?」

「き、木手くんっ?!」




顔を上げるとそこには整った顔が。




「これ、部活の資料です。目を通して置いてくださいね。」

「あ、うん。」




十数枚のプリントを机に置かれた。
部活の資料って、こんなにも何が書かれているんだろう。
プリントを持ってみた。
視界にまた自分の手が写り、目を背けた。



「………」




黙っていると、木手くんが『どこか誤字でも?』と言いながらプリントを取ろうと手を伸ばした。
一瞬、手が触れた。




「っ………!」




思わず手を引いてしまう。
木手くんがまだ掴んでいないのに、私が手を離したせいでプリントが散らばる。





「あ、ご、ごめんっ!」

「ミョウジさーん、どうしたの〜?手伝って上げるよ〜。」

「あ───ありがとう。」




ほとんど喋ったことがないさっきの女子生徒。
木手くんが、いるからだろうなぁ…。
そう確信し、苦笑した。
彼女はすばやくプリントをかき集めると、私ではなく、彼に渡した。




「木手くん、これ!」




差し出した彼女の手は綺麗で爪もキラキラと光っている。
木手くんは少し驚いたような、感心したような視線を彼女の手元に向けた。




「……」

「き、木手くん?」

「何ですか、早く机に置きなさいよ。」




(いつものように)キツイ口調で言う木手くんに、少し怯えた様子で机にプリントを置きそそくさと逃げていった。
彼女の手元に…………私とは大違いの綺麗な手に目を向けた……。
やっぱり木手くんも好きだよね、綺麗なほうが。





「───で。さっきからどうしたんですか。」

「えっ?な、何が…?」

「自分の手を深刻そうに見つめたり、俺の顔を見たり、今日のあなた変ですよ。」




少し恥ずかしくなり、顔を下げた。




「い、いやぁ……手が、ね。」

「手?」




そういって私の手を取る。


『うぇぇえ?!』


と変な声を上げると冷たい目で見られた。




「俺達がこの手に、どれだけ支えられて来たか…。一生懸命やっていた事はよく知っています。
誰がなんと言おうと、君がいなければテニス部はここまで来れなかったでしょうからね。」

「木手…くん…?」




木手くんが……優しい言葉を私にかけてくれてる…?
これは、夢?




「人がせっかく褒めているのに、"夢"とは失礼な。」

「えっ、何、心読んだ?!」

「声に出ていましたよ。」

「えぇっ!あ、いや、その、別に本気で言ったわけじゃ…な、え、あ…」





あたふたしている私をよそに、木手くんは私の手を両手で包み込んだ。




「とにかく、貴女がなんと言おうと俺は、貴女の手、好きですよ。」

「あ、あ、ありがとうございます。」




真っ赤になりながら答えると、彼は怪しげにニヤリと口元を吊り上げた。




「また部活で待っていますよ。」




耳元で囁かれると、全身が赤くなった気がした。






どうしよう隠し切れない
(木手くん、気付いちゃったかな…)
(バレバレですがね)






(永四郎もバレバレやっしー)

(何がですか、甲斐くん?)

(永四郎がナマエを好き──…っえ、永四郎!?)

(……甲斐くん…覚えておきなさいよ…。)

((やっぱり永四郎は怒らせると怖いさぁ…))




 
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