テニスの王子様 Book

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「でーきーたぁー!」




プリントとにらめっこすること2時間、柳に教えてもらって30分で倒す事が出来た。
本当に嬉しい!
もしかして柳って実はいい人?!
そんな疑惑を抱きながら、私はヤツの手を取って両手で握る。




「ありがとう、ありがとう!流石柳、ありがとう!大好き愛してる!」

「お前の愛の言葉ほど、鳥肌が立つものはないな。」




失礼な!
とそれだけ言うと私は帰り支度をし、鞄を担いだ。




「私、もう帰るね!」




そういって、失礼な柳を無視して歩きだした。
……が。




「……っ!」




予想外にも足を机に引っ掛けてしまったようだ。
マンガのような展開とは、こういうことを言うのか。
一瞬の間にこんな冷静な事が考えられるなんて、自分を褒めてあげたい。
そんなことを考えているうちに、私の重心は前に倒れていく。
どうしよう…上手く体勢を立て直す事ができない…!




「世話が焼ける。」





そう聞こえてすぐ、私は支えられていた。
……彼に。
すっぽりと柳の腕の中におさまった私は、そのまま上を見た。
…柳が見えた。




「あのーそろそろ離していただけないでしょうかー…?」

「断る。」

「なんで!!」

「分からないのか?」




目線(見えているかは別)は一度もこちらを見ずに、顔も前を向いている。


『"分からない"って、何が?』といいたげな私の沈黙を予測していたかのように、彼は大きなため息をついた。




「俺がわざわざこの教室に来たのはなぜだ?本当に嫌々お前に勉強を教えていたように見えたか…?」

「え……?」




わざわざ、ここに来たって?
ように見えた…って?
あれ、あれ!?
ちょっと待って、もしかして…?




「や…や、やな…ぎ……!?」

「先程、お前は何でもすると言っていたな。」




彼の口から放たれる言葉には、どこか余裕が、またどこかには楽しんでいる様子が伺えた。
さっきまでは何とも思ってなかったのに、今は私の髪に息がかかることさえ、我慢できない。
ドクドクと早く打つ鼓動がうるさい。
彼は私の耳元で、静かに囁く。




「お前に拒否権はないぞ。」





いつもなら、"ふざけんな!"とかも簡単に言えてしまうのに。


どうして……



どうして、いつもとほんの少し違う彼を見


ただけで……




こんなにも──……上手く話せなくなるのだろう。





いつもと違うきみだったから
(私はただ、高鳴る音を聞いていた)





 
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