テニスの王子様 Book

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「……あ」

「……あ!」




放課後の教室、"あ"と発した人物が二人。
前者は"何故今のタイミングで来たのだろう"と、後者は"なんという良いタイミング!"と思っているだろう。
前者はもちろん…




「柳ぃーー!!」




というと後者は…




「…ミョウジ……。」




である。




「柳、柳、ちょっと、こっち!」

「……」




私が柳を手招きすると顔をサッと背ける。




「ほらぁ、恥ずかしがんなくてもいいじゃなぁ〜い!や・な・ぎ〜く………ん゛゛」




ちょっとからかってやろうと、大袈裟に言ったのがダメだった。
私が柳を呼び終わる前に、彼は私の頭に手持ちの分厚ーい辞書を落としたのだ。
彼は謝ることもせず、ハッと人を見下すかのように(いや、実際見下しているのだけれど)鼻で笑った。




「まるで潰れたカエルのような鳴き声だな。」

「かよわい女子の頭に辞書落として置いて、何言ってんのよ!!」




頭をさすりながら、柳を見て言い返してやる。
男の行動とは思えないわ!!
柳は静かに目頭に手を添え、眉間にシワをよせた。





「…あー…すまない、最近疲れていてな、今少し幻聴が聞こえた気がするんだが…まさか、とは思うが"かよわい女子"と言ったか?」

「え…えぇ、言いましたけど?!かよわいよ、私!」

「いや、そこではない。女子…と?」

「おま……!……生物学上れっきとした女の子ですよーだ!柳のバーカ!あんたになんか何も教えてもらいませんー!バーカ!」




バーカ、バーカ!
と連呼した。
かよわい……は確かに嘘だけど、性別を疑われるなんて…。
フンッと顔を勢いよく背けて、机の上のプリントを見る。




「……」


10分経過


「……」


また10分経過


「……」


そうして1時間経過


 わ か ら な い 




「…うぅ…や、…柳ぃ…」




言いたくない…頼みたくない…
まだこの教室にいる柳の方をゆっくり見た。
どうせ『頼み方が違う』とか言いはじめるんだろうな…と思った矢先…。





「…はっ…頼み方が違うな。」




い、今鼻で…いやいや、それに予想がそのまま的中した!
私は色んな事に驚きながらも、柳に頭を…下げた。




「お願いします、柳さんのお力どーしても、必要なんです!」

「断る。」

「は!意味分かんないし!今のノリで断るか普通!」

「俺は一言も"教える"とは言ってないが?」

「あー、あー!なんなの!もう、なんでもするから教えてよ!!」




嫌々頭を下げたのに、断られるなんてなんて酷いやつなんだ!!
ダンッと机を叩くと柳がニヤリと笑ったような気がした。




「……ほぅ?何でもする?…いいだろう、教えてやる。」




何でもする…なんて、勢いで言ってしまったが…。
まずは、このプリントを倒さない事には何もできない。
………よし!




 

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