テニスの王子様 Book

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「ミョウジ、」

「…………今度は何…。」

「氷が溶けた。」




そういって、氷枕(…今は溶けて水枕)を頭の下から抜いた。
今度は氷か……。
ため息をついて、枕を受け取る。
…柳は今日、風邪をひいた。
その彼を、私は看病している。
何故、休日に柳の家にいるかというと、それはすこし遡るのだが…。




*************




「ナマエ!休みだからっていつまで寝てる気!?いい加減起きなさい!」

「はいはーい…」




休みの日くらい、寝ててもいいじゃない。
ボソッと愚痴をこぼし、大きく伸びをした。




「ふぁぁあ…眠ーい…」




あくびをしたところで、携帯が震えた。
電話らしく、携帯を開くと名前と番号が表示された。
……これは珍しい相手だ…。
ピ、とボタンを押して電話に出た。




「もっしもーし?休みの日に電話かけてくるなんて、寂しがりやさんだなぁ、もう!」

「………切るぞ。」

「う、嘘、嘘!!柳が私に電話なんて、珍しいから…つい☆」

「何が"つい"だ。これだから頭の弱い奴は…。まぁそんなことはどうでもいい。お前に頼みたいことがあってな………」





『ノートを学校まで届けてほしいんだ。』




なんでも、柳は風邪をひいてしまっているらしい。
部活の必要事項が書いてあるから、幸村くんに渡せ…と。
なるほど、じゃあ柳の家に…
柳の家に……柳の…家………!?
『柳の家』という単語に勝手に有頂天になった。
あの、世にも奇妙な柳さんの家を解析できるとなりゃあ、誰でも有頂天にはなりますよ。



そして念願の柳家。
出迎えてくれたのは柳で。
家に上がらせてもらったところで、彼が"あぁ"と声を上げた。




「あぁ、そういえば、部活午後からだった。」




そしてまさかの勘違い。
時計の短針は9、長針は6を差している。
要するに、只今9時30分。
ノートを幸村くんに届けなければいけないのは遅くとも1時。
空白の3時間30分。
私は何をしてればいいの?




「暇なら時間を潰していけ。」

「え、いいの?」

「あぁ、どうせ他に人はいないからな。」




どうやら家の人は出払っていて、柳だけだという。
休日の朝なのに、皆さん忙しいね…。
こうして私は柳宅で3時間30分余りの暇を潰す事になったのだ……。





*************




だがしかし!
こき使われる…だなんて聞いてない!
風が入るから扉を閉めろ、喉が渇いたから水を持ってこい、氷枕を持ってこい……etc
目を反らしたくなるほど、人使いが荒い。




「そんなに人使い荒いなら、私帰る!」

「……待て。」

「用件は一応…済んだが、もう少し…ここにいろ。」

「………え?」




そのとき私が


不覚にも、キュンと来たのは…



───の、始まりだったのかもしれない。







それはね、恋だよ
(恋?これが?)
(どうした?)
(な、な、何でもないヨ!/////)
(((何意識してんだ、私!)))







 




「幸村くーん!」

「ん?…あれ、ミョウジ?どうしたんだい?」

「あのね、柳が幸村くんに渡してって。」




そういって、パタパタと走ってきた彼女は俺に一冊のノートを差し出した。
不思議に思い、表紙をめくってみると…



『少し利用させてもらった。話を合わせておいてくれ。』



と、いつものような整った字で書いてあった。




「ふふ。」

「?何か面白いこと書いてあったの?」

「いや、蓮二もやるな、と思っただけだよ。」

「……?」




蓮二でも、好きな子の前では不器用なんだね。
俺を利用するなんて、やるじゃないか。
でも、風邪が治ったら何かおごってもらわないと。



 

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