□天パは直毛に憧れるけど直毛は天パに憧れる 桂銀(銀目線)
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春の肌寒いある日。

俺はいつもどおり仕事のない今日を満喫していた。
満喫しているといっても、特にすることがないから買い置きしてあった苺アイス片手にテレビを見ているだけなのだが。

「暇だなぁ…」

新八も神楽も今は出かけていて居ない。

新八はお通のライブで今夜は戻ってこない。
神楽はいつの間にか出かけていて定春も居ないところを見ると遠出しているらしい。

アイス食べて一眠りすれば、もう日が暮れていた。
いまだ神楽は帰らない。

(また新撰組にでも押しかけて飯にありつく気か?)

沖田と仲のいい(?)神楽は時折、新撰組に勝手に押しかけては厄介になっているらしい。

(…へたすりゃ帰ってこねぇな。)

男ばかりが集まった場所に女の子をひとり置いておくのも普通なら心配なところだが、神楽にその手の心配はするだけ無駄だ。

そう考えると、一人の部屋がいやに寂しく感じた。

そういう時、考え付くのはいつもアイツ。

「…今日はこねぇのかな。」

アイツはいつも突然やってくる。
玄関から入ってくることもあれば(まぁ、その度にドア蹴り倒してババァに怒鳴られるわけだが…)窓から入ってくることもある。
だが正直言うと、あまり窓から来てほしくない。

なぜならそういう時、決まってアイツは怪我をして入ってくるからだ。
ドジを踏んだのか、追われてやっと振り切ってきたところだといわんばかりにボロボロで汗だくで…

いつも心臓が止まりそうになる。
しかも本人がすぐに無理をしようとするからなおさらだ。

「…会いてぇな…」

ボソッと出た言葉に自分で言ったにもかかわらず恥ずかしくなって顔を赤くしながらソファーに顔を埋めた。

まだまだ冬の名残が残るこの時期は少し肌寒い。
かといって、何かかぶるものを持ってくるほどでもない。

例えれば人肌恋しかった。

ソファーでごろごろしているといつの間にか寝ていた。
気づいたときには時計の針が十二を指していた。

「やっべ…風呂入ってねぇ、」

寝ぼけながらそんなことを思っていると、
ガラガラッと扉の開く音がした。

(あぁなんだ、神楽のやつ帰ってきたのかよ…)

そう思ってまた眠りに入ろうとしたときに、明らかに雰囲気の違う足音に俺はまた意識を取り戻した。

着物がすれて、起こさないようにとゆっくりとした足取りで向かってくる足袋の音…

ふわっと、懐かしい匂いが鼻を掠めた。
同時に落ちてきた黒いつやのあるまっすぐな…
俺がどうあがいたって手に入れられないぐらい、まっすぐで真っ黒でつやのあるきれいな髪…
その髪の持ち主は俺のどうしようもなく跳ねた真っ白なごわごわの髪を、面白いのか撫でるように梳いていた。
俺はそれが気持ちよくてまた意識を手放しかけたけれど、どうしても言いたいことがあったから耐えた。

「…おかえり、ヅラァ〜」
「…ヅラじゃない桂だ。すまない、起こしてしまったな…」

そう言って俺の頭を抱きしめてきた。
スキンシップが嫌い(嫌いっつーか、単に恥ずかしいだけだけど…)な俺はいつもなら照れ隠しにぶん殴るところだけど、今回は寂しいときに呼ばずとも来てくれたのだし許してやろう。

なによりも、懐かしい匂いと優しく包んでくれる腕が気持ちいいし…

俺が少し笑ってこの居心地のよいまどろみの中で眠るために目を瞑れば、ヅラも笑っておでこくっ付けてきやがった。

ちきしょう…気持ちいい。

やっぱ勝てないなと思いながら意識を手放すと、体が浮いて柔らかい俺の大好きなふかふかの場所に下ろされた。
手が離れた瞬間少し不安になったけれど、隣にぬくもりが来た瞬間そんな不安はすぐに解けた。


肌寒い春の日に、なぜか暖かかったある日のこと。









〜おまけ〜

「ねぇどうする神楽ちゃん…?」
「銀ちゃん寂しいだろうと思って帰ってきてやったのに何アルかこの扱い!」
「しょうがねぇさ、今入っていったら雰囲気ぶち壊しだろ?」
「うわっ高杉さんいつのまに!?」
「なんかもうどうでもいいネ。新八ぃお前のうち泊めるアル!」
「えぇっ!?」
「俺もさぁ〜最近新撰組のやつら張り切っちゃっててどこ泊まろうにも泊まれねぇんだわ、泊めてくれ。」
「どうせ今晩は銀ちゃんも久しぶりだから朝までここ入るの無理アル。」
「…しょうがないですねぇ…」
志村家、今夜はみんなで鍋パーティー。
 

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