NARUTO短編集

□君よ、美しくあれ
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こんな真夜中にあいつが姿を見せたことをオレは特に意外だとは思わなかった。

最近ずっと夜道を張っていたと聞いても、驚きの感情は沸いてこない。



ただ静かに、そうか、と思った。



ナルトは鈍いからな、気付くとしたらサクラだろうとは思っていた。







決心は変わらない。

だが、苦しめたくはなかった。



あいつが苦しむって?

お前もずいぶん図々しくなったもんだな。

お前のためにか?

そんなことが何故わかる?





わかるさ。





オレたちは、三人で一つだった。

共に行動し、共に成長し、共に窮地を乗り越えた。





仲間だった。






だからわかる。





ナルトやカカシの思いも、今、あいつがここにいる理由も。











振り向いてはいけない。

気に掛けてはいけない。



あいつがどれだけ傷付くかを知って、

どれほどオレの言葉を待っているかを知って、

震えるあいつの目の前を素通りする。

すれ違いざまに、あいつの瞳が大きく揺れるのが見えた。





どうして何も言ってくれないの…と、必死に声を絞り出すあいつは、

それでもまだ、オレを引き止めることを諦めてはいなかった。



堪らず、オレはあいつの言葉を遮る。





耳を傾けてはいけない。

立ち止まってはいけない。

そう思うのに、振り返らずにはいられなかった。





だからせめて、発する言葉は、出来る限り、突き放すように。






闇夜であいつの泣き顔がよく見えないことは、せめてもの救いだ。










覚えているか、とあいつは問う。

オレたちがチームを組むと決まった日。

始まりの、あの日。





覚えている。





──おまえ、うざいよ。

あの日、ナルトに対する軽率な発言に腹が立ち、オレはあいつにそう言い放った。



中身のない頭の軽い女。



あの時のオレは、あいつのことをそう思っていた。







いつからだろう?



あいつらを



あいつを身近に感じるようになっていたのは。
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