NARUTO短編集
□自分だけの色
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今まで、自分を守るために一生懸命目を瞑っていた私は、いのちゃんと出会って、少しずつ変われている気がしてた。
いのちゃんは、私の長い前髪に手を触れて、温かい声で言ったの。
「ほら、あんたこっちの方が似合ってるよ!」
その言葉に促されるように、きつく閉じた瞳を恐る恐る弛めると、
周りの景色が、ゆっくりと色鮮やかに映し出された。
長い間、私の視界を遮っていたうっとおしい前髪は、もうなかった。
いのちゃんに連れられて、いろんな友達と遊ぶようになって、
笑顔で私の名前を呼んでくれる子も増えて…
世界はそんなに攻撃的じゃないって、思えるようになったんだ。
気が付いてみると、私の周りにはいろんな子がいた。
元気な子、優しい子、おもしろい子。
みんなそれぞれに気の合う子たちを見つけて、心を許し合って、楽しくおしゃべりしてる。
それぞれの集まりには、それぞれの雰囲気と色があって、
その子たちが別々の場所にいても、その色はいつも一緒。
同じ空気。
私にも、色はついてるのかな?
そう思うと、何だかくすぐったいような、不思議な気持ちになった。
そうやってみんなに溶け込み始めた頃、私はサスケくんと出会った。
教室を通り過ぎる時に、ガラス戸からチラリと見えた人影。
何となく気になって覗いてみると、男の子が一人、ポツンと椅子に座っていた。
誰だろ?
今は昼休みで、みんな外で遊んでるのに。
かく言う私も少し遅れてみんなの元に向かうところだった。
首元を大きく覆う群青の服を着た少年。
真剣な面持ちで書物を見つめている。
何読んでるのかな?
ツンと立ったくせ毛の黒い髪。
前髪の合間からちらりと見える漆黒の瞳は、
窓ガラスから差し込む日差しを受けて、字面を追うたびにキラキラと光った。
ふと、彼が本から顔を上げ、目の前を見据える。
その表情に、瞳に、私はドキッとした。
強い意志を宿した鋭い視線。
何かを射抜くように真っすぐ前を見つめている。
外からの光を浴びて、彼の輪郭は淡く輝いた。
その表情は、普段同年代の男の子たちが見せるものより数段大人びていて…
とても綺麗だった。
私の胸は、何かに急き立てられるように高鳴る。
徐々に激しさを増して、
やがてどうしようもなくなったところで、
キュッと締まった。
不意に、視線を感じたのか、その男の子がこちらに顔を向ける。
パチッと視線が絡み合って、私は慌ててその場を逃げ出した。