捧げもの

□あったかい手
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その夜、オレたち親子三人は、親父が帰ってきたところで食卓を囲んだ。

マガナミの席が空いているのを見て、親父が不思議そうに尋ねる。

「マガナミはどうしたんだ?いねぇのか?」

「それがね、熱出しちゃって寝てるのよ」

母ちゃんが答える。親父は驚いた顔をして、そりゃいけねぇと呟いた。

「で、どうなんだ?熱は…高いのか?」





親父がマガナミの容態を尋ねたところで、当の本人が顔を見せた。

マガナミの顔は火照っており、足元はヨロヨロと覚束ない。

あまり体調は回復していないようだ。

母ちゃんが慌てて立ち上がった。

「私、あの 寝てしまった みたいで……あの ご、ごめんなさい…。何か やること……」

マガナミは恐縮しまくっている。

寝ていた分を取り戻そうと、母ちゃんに仕事の打診を始めた。





オレたち三人はギョッとした。

おいおい、こいつまだ自分の体調悪いの気づいてねぇのか?

フラリとよろけたマガナミの身体を母ちゃんが支える。

「お前なぁ、そんだけダルけりゃ自分が風邪引いてるって気づくだろ普通」

オレは思わずため息を溢した。

それを聞いた親父がオレの頭をはたく。

「弱ってる女性にそんな言い方するんじゃねぇ」

「いってぇな…」

「寝てていいのよ。すごい熱なんだから。あ、でもご飯食べられる?ホントは少しでも食べた方がいいんだけど…」

いつもならここでオドオドと「そんな…」とか「そういうわけには…」とか返ってくるところだが、今のマガナミはあまり頭が回っていないらしく、素直にコックリ頷いた。

母ちゃんがマガナミを席に着かせる。

「一応お粥作っといたの」

そう言って母ちゃんはマガナミの前にお粥を置いた。

しかしマガナミはポーッと前を見つめるだけで、食べ始める気配がない。

それを見た母ちゃんは、柔らかく笑ってスプーンを手に取った。





「はい、口開けられる?」









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