捧げもの

□エリシアの恋人
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「緊急事態だ!すぐに来てくれ!オレはもうダメだ!」



切羽詰まったヒューズの電話を受け、エド・アル・ウィンリーの三人は、着の身着のまま中佐の家に駆けつけた。

緊急事態とのことでそのまま家の中に踏み込んだ彼らの目に入ったのは、同じくヒューズに呼びつけられたのであろうマスタングだ。

マスタングは突然の侵入者に驚いた様子で振り返る。

そして三人の姿を認めると、呆れた表情を浮かべ、素早く前に向き直った。

「お前というやつは…こんなことのために彼らまで呼んだのか?」

大きくため息をつくマスタングに、ヒューズは憤慨する。

「こんなこととはなんだ!世界が滅ぶに等しい緊急事態だろうが!」

マスタングは呆れてものも言えないようで、そのまま黙り込んでしまった。

「それで…」

ウィンリーがおずおずと手を挙げる。

「ボクたちは何のために呼ばれたんでしょうか?」

アルがその後を引き継ぐ形で質問した。





三人は完全に話から取り残されていた。

緊急事態と豪語していたわりに、緊迫した空気があまり感じ取れないのは何故か。

あの電話の意図は何だったのだろうと疑問に思わずにはいられない。





すると、ヒューズがマスタングを押し退け、眼前に迫る勢いで距離を詰めてきた。

かなり近い。

目の前に立たれたエドが体をのけ反らせ、半歩後ずさった。

「よくぞ聞いてくれた!」

そんなエドの両肩をヒューズがガッチリと掴む。

その手は小刻みに震えている。

次の瞬間、ヒューズは両目から大量の涙を溢れさせた。

「エエエエリシアが…」

エリシアと聞いてウィンリーが驚いて反応する。

「エリシアちゃんがどうかしたんですか!?」

「エリシアが…」

三人はゴクリと息を飲む。





「男を連れてきたんだっっ!!」





三人は、思い切り肩透かしを食らった。

思い思いにそれを全身で表現する三人を見て、マスタングは更に大きなため息をつくのだった。
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