捧げもの
□エリシアの恋人
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ここで話しているよりも実際に現場を見た方が早いっ!というヒューズに半ば無理矢理連れて来られたのは、子ども部屋の前だ。
ヒューズは部屋を少しだけ開けてこっそりと中の様子を覗き見る。
「ほら、見てみろ!天使のようなエリシアに今にも襲い掛からんとする汚らわしい悪魔の姿を!」
ヒューズのテンションは、小声ながらも、ここに来て最高潮に上り詰めたようだ。
もちろんそんなものいるはずがない。
呆れたまま部屋を覗き込んだ四人が目にしたのは、仲睦まじく同年代の子どもたちと遊ぶエリシアの姿だった。
男の子は数人いるものの、女の子だっている。
要は友達が遊びに来ているのだ。
「…ったく、何事かと思って飛んできてみりゃあ、結局これかよ…」
エドが眉をぐったりと下げた。
「エリシアちゃん友達たくさんいるんだね」
アルは近所のお兄さんみたいな視線を部屋に向けている。
「そうよ、エリシアちゃんはみんなの人気者なんだから!」
そう答えるウィンリーは、エリシアを自分の妹のように自慢げに語った。
「母親に似て器量がいいからな。あと十年もすれば魅力的な女性になるだろうな」
マスタングには今現在のエリシアは見えていないようだ。
「なあ!これでわかっただろう!?これはゆゆしき事態だ!娘の危機だっ!」
ついにこらえきれなくなったのか、ヒューズが大声で喚いた。
「おい中佐!んな大きな声出したら…」
「パパ!さっきからなぁに?みんな気になって遊べないよぉ」
とうに外の騒動に気づいていたエリシアが、部屋のドアを開けた。
「エリシアァ!パパは心配なんだよ!誰なんだ!?あの男たちは!」
ヒューズは両手をワキワキさせながらエリシアに迫る。
うわぁ…
外の一同はドン引き状態のまま動くことができない。
「フリッツくんとオスカーくんとクリストくん?エリシアのお友達!カミラちゃんとエルナちゃんも!」
「友達いっぱい連れてきたのね」
ヒューズの後ろからウィンリーがひょっこり顔を出すと、エリシアの表情がパッと輝いた。
「ウィンリーお姉ちゃん!」
「こんにちは!エリシアちゃん」
「あ!エドお兄ちゃんとアルお兄ちゃんとロイおじちゃんも!」
「よっ」
「こんにちは」
「おじ………」
マスタングはショックで固まっている。