捧げもの

□春の花見と天敵
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春うらら。

人々の心も浮き足立つ暖かな季節がやって来た。

春と言えば別れの季節。

春と言えば出会いの季節。

春と言えば桜の季節。










「花見を開催する!コテツ、イズモ!準備をしておけ!場所は木の葉公園がいいだろう」

綱手が、山のように荷物を抱えた二人に向かって言い放った。

綱手はお祭りごとが大好きである。

「えーっ!!」

二人はほぼ同時に抗議の悲鳴を上げた。

「何だ?文句でもあるのか?」

綱手がギロリと睨みを効かせる。





普段はここで渋々折れる二人だが、今回は違った。

「この季節に公園なんて行ったら…」

「自ら敵陣の真ん中に飛び込むようなものですよ!」

突然訳のわからないことを言い出す二人に、綱手は眉をひそめる。

「お前ら一体何の話をしてるんだ?」

二人はグッ身を乗り出した。





「花粉ですよ!!」





「何ぃ?花粉?」

「そうです!」

「オレたち、花粉症なんです!」

二人の必死の主張が室内に余韻を残す。

やがてその余韻も消えた頃、綱手は大声で笑い出した。

「何を言い出すかと思えば!そのくらい、気合いで何とでもなるだろう!」

あまりに花粉症を軽く見ている綱手に、二人はムッとして切り返す。

「気合いでどうにかなるもんじゃないんですよ!」

「そうです!この苦しみは綱手様にはわからない!」

「どうしてもやると言うのなら、花粉症の人間に優しい花見を考えてください!」

「そうだそうだ!」

綱手は、ものすごい剣幕で捲し立てる二人に面食らってのけ反った。

体制を立て直すと、フム、と顎に手を当てる。

「よし。あいつにアイディアを出させよう」

「あいつ?」

二人は不思議そうに顔を見合わせた。
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