捧げもの

□説明書には書いていないこと
1ページ/4ページ

最近、少しずつ家事を覚え始めたマガナミである。

覚え始めた、というと今まで家事をしたことがなかったのかと誤解される方もおられるかもしれないが、そうではない。

木の葉には、今までマガナミが使ったことのないような道具がたくさんあるのだ。

覚え始めたというのは、主にその道具の使い方のことである。





先日、シカマルから掃除機の使い方を学んだマガナミは、それが自分にも比較的容易に扱えるということを知って何となく明るい気持ちになっていた。

すぐに使用法を覚えたことで怒られる心配が減ったということももちろんあるが、物珍しい道具を使えることが楽しかったのだ。

他にもこのような道具はたくさんあるらしい。

マガナミは自分でも気づかないうちにワクワクしていた。

次はどんな道具が出てくるんだろう?










そんなある日、ヨシノがマガナミに声を掛けた。

「マガナミちゃん、悪いんだけどそこの洗濯物を洗濯機にかけておいてくれる?あらやだ、遅刻だわ。じゃあよろしくね!」

ヨシノはかなり忙しいようだ。

あっという間に家を出ていってしまった。

マガナミは誰もいなくなった部屋にポツンと取り残される。





マガナミが機械に極端に疎いことをシカマルは知っていた。

シカマルは知っていたが、ヨシノはその事実を未だ把握していない。

そんな彼女は、台所でマガナミが手際よく野菜を切ったり皿を洗ったりしているのを見て、家事は得意だと思い込んでいたのである。

ある意味、誤った判断ではない。

しかしそれは、あくまで機械を使わない場合において、なのだ。





マガナミは困ってしまった。

洗濯機がどれかということは知っていたが、まだそれを操作したことはない。

果たして何をどうしたらよいものやら…。





とりあえず、マガナミは洗濯物を持って洗濯機の前まで来てみた。

白くて四角い箱をペタペタ触ったり、そこについているボタンを確かめてみたりする。

取っ手らしきところを持ち上げると、蓋が開いて中に空洞があるのを発見した。

多分ここに洗濯物を入れるのだと当たりをつけたマガナミは、洗濯物を中に放り込む。

ふう、と一息ついた。

この後どうすればいいのだろう?





ふと、洗濯機の横に小さな冊子が掛かっているのを目に止めた。

手に取ってみるとどうやらそれは説明書のようだ。

これがあれば、とマガナミは表情を明るくする。

早速説明書の手順を追って操作を始めた。





ここで蛇口を捻って水を入れる…それから洗剤を適量…





……適量?





洗剤を適量入れると書いてある。

が、適量とはどのくらいだろう?

洗剤というのはおそらく脇に置いてあるこれのことだ。

しかし適量とは…?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ