捧げもの

□脳裏に蘇る一場面
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「なあなあ、この前偶然サクラちゃんに会ったってばよ!」

「へー」

「あっそ」

「なんだってばよぉ!お前らノリ悪ぃぞ!」

「てか、お前ってホント、何かにつけてサクラ、サクラだよな」

「ほっとけってばよ!」

「あいつといのは看護学校だったな」

サクラといのの二人は看護師を目指し、看護の専門学校に通うことになっていた。

「あの二人、結局仲がいいのか悪いのか分からずじまいだったってばよ」

「本人たちもわかってねんじゃねぇの?」

「だな」

キバとシカマルはくつくつと笑う。

「う〜ん、そんなもんなのか?」

ナルトは唸り声を上げて考え込んでしまった。










細い道から大通りに出る。

車の通りが激しくなった。

音の往来に、三人だけだった世界から急速に引き戻される。

ライトの明かりがキラキラと瞬き流れてゆく。

いつも部活帰りに見た、馴染みの風景だ。

「こんな遅くに帰んの、久しぶりだな」

キバが呟いた。

心なしか、名残惜しそうな声色である。

こうして慣れた夜道を三人で帰るのは、これで最後かもしれない。

「ホントだってばよ」

「そうだな」

直接口にはしないが、二人も同じような感慨を覚えていた。










大通りを横切ってまた暗い小道に入る。

「あれ?」

しばらく歩いていると、ナルトが道の端を覗き込んだ。

「なんだ?」

「どうしたんだ?ナルト」

「こんなところにお地蔵さんがあるってばよ」

「地蔵?」

「あっホントだぜ。お前よく見つけたなぁ」

そこには小さなお地蔵さまがひっそりと佇んでいた。

「供え物がしてある。前からあったみてぇだな」

「今まで全然気付かなかったってばよ」

「ああ。三年も通ってきてたのになぁ」

「通り道ってだけで、大して注意も払ってなかったしな」
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