捧げもの
□トラップにご注意!
1ページ/5ページ
サスケは大いに不満だった。
頬を膨らませ、玄関まで走る。
「兄さん!今日は修行に付き合ってくれる約束だったじゃないか!」
靴を履きながらイタチがサスケを振り返る。
「すまないサスケ。急な任務なんだ」
「断ればいいじゃない、そんなの!」
サスケは兄を引き留めようと必死だ。
「サスケ、あんまり兄さんを困らせないの」
見送りに出てきたミコトがサスケをたしなめた。
サスケは更に頬を膨らませてそっぽを向く。
「サスケ」
イタチがサスケを手招きした。
兄に呼ばれたのが嬉しくて、サスケは膨れっ面をしていたことも忘れ駆け寄っていく。
「また今度な」
近寄ってきたサスケの額を二本の指で軽く小突くと、イタチは行ってくる、と言って玄関を出ていってしまった。
残されたサスケは額を押さえてもう一度膨れっ面。
「兄さんはいつもそれだ」
そう、アカデミーに通うようになった頃から、イタチはあまりサスケに構う時間がなくなっていた。
お兄ちゃん子のサスケは、自分が捨てられたような気がして、寂しくて仕方がないのだ。
どうしたらイタチは自分を構ってくれるのだろう?
サスケは考えた。
イタチが構ってさえくれれば、方法は何でもよかった。
そして考え付いたのが、イタズラ、だ。
その日から、サスケは何かとイタチにちょっかいを出すようになった。
物を隠してみたり、靴の中に石ころを入れてみたり、足元に紐を張ってみたり。
しかしイタチはそんなことに気も掛けていないようだった。
隠したものはほんの数分で探し当てる。
石ころは履く前に外に出してしまうし、足元の紐も一度として引っ掛かったことはない。
サスケは悔しくなってきた。
くっそー兄さん、全然引っ掛からないぞ。
新たな策として、サスケはイタチの部屋のドアにトラップを仕掛けた。
ドアを開けると挟んでおいたものが落ちてくるという、典型的な仕掛けである。
サスケは台所から小麦粉を拝借し、袋に入れて口を開けたままドアに挟んだ。
これでイタチが自分の部屋に入ろうとドアを開けた瞬間、小麦粉が落ちてきてイタチの顔を真っ白に染めるはずである。
自分の部屋に入る瞬間ならば、さすがのイタチも気を緩めるであろう。
今度こそ引っ掛かるぞ!
サスケはにまーっと笑みを浮かべた。