捧げもの

□トラップにご注意!
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サスケは大いに不満だった。

頬を膨らませ、玄関まで走る。

「兄さん!今日は修行に付き合ってくれる約束だったじゃないか!」

靴を履きながらイタチがサスケを振り返る。

「すまないサスケ。急な任務なんだ」

「断ればいいじゃない、そんなの!」

サスケは兄を引き留めようと必死だ。

「サスケ、あんまり兄さんを困らせないの」

見送りに出てきたミコトがサスケをたしなめた。

サスケは更に頬を膨らませてそっぽを向く。

「サスケ」

イタチがサスケを手招きした。

兄に呼ばれたのが嬉しくて、サスケは膨れっ面をしていたことも忘れ駆け寄っていく。

「また今度な」

近寄ってきたサスケの額を二本の指で軽く小突くと、イタチは行ってくる、と言って玄関を出ていってしまった。

残されたサスケは額を押さえてもう一度膨れっ面。

「兄さんはいつもそれだ」







そう、アカデミーに通うようになった頃から、イタチはあまりサスケに構う時間がなくなっていた。

お兄ちゃん子のサスケは、自分が捨てられたような気がして、寂しくて仕方がないのだ。







どうしたらイタチは自分を構ってくれるのだろう?

サスケは考えた。

イタチが構ってさえくれれば、方法は何でもよかった。







そして考え付いたのが、イタズラ、だ。















その日から、サスケは何かとイタチにちょっかいを出すようになった。

物を隠してみたり、靴の中に石ころを入れてみたり、足元に紐を張ってみたり。

しかしイタチはそんなことに気も掛けていないようだった。

隠したものはほんの数分で探し当てる。

石ころは履く前に外に出してしまうし、足元の紐も一度として引っ掛かったことはない。

サスケは悔しくなってきた。

くっそー兄さん、全然引っ掛からないぞ。















新たな策として、サスケはイタチの部屋のドアにトラップを仕掛けた。

ドアを開けると挟んでおいたものが落ちてくるという、典型的な仕掛けである。

サスケは台所から小麦粉を拝借し、袋に入れて口を開けたままドアに挟んだ。

これでイタチが自分の部屋に入ろうとドアを開けた瞬間、小麦粉が落ちてきてイタチの顔を真っ白に染めるはずである。

自分の部屋に入る瞬間ならば、さすがのイタチも気を緩めるであろう。

今度こそ引っ掛かるぞ!

サスケはにまーっと笑みを浮かべた。
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