捧げもの
□敵は内部にあり
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自分の担当地区を頭に叩き込み、最も効率の良いルートを導き出す。
集中し、脳内シミュレーションを繰り返す。
よし、これならいけそうだ。
シカマルはホッと気を緩めた。
その時、何故かはわからない。
全身に戦慄が走ったのだ。
嫌な予感がじわりと身体に広がってゆく。
甘い匂いがした。
反射的に匂いのする方へ振り返る。
そして、振り向かなければよかったとすぐに後悔した。
そこには、信じ難い光景が広がっていた。
…いやいやいや、いくらなんでもこれは。
何かの間違いだろ、幻覚だろ、多分。
……いやいやいやいやいや。
「ぎゃーーーーー!!何やってんのよチョウジィィィィィ!!!」
シカマルの現実逃避を打ち消すかのように、いのの悲鳴が響き渡った。
シカマルはがっくりと肩を落とす。
幻覚じゃ、ねぇな…。
樹上から様子を伺ってたアスマも盛大に首を下げた。
こんなことになるんじゃねーかと直前まで荷物の受け渡しを引き延ばしたんだが…意味無かったな。
チョウジは、プレゼントとして配る予定のクリスマスケーキをむしゃむしゃ食べていたのである。
「だって、見てよいの。この箱、穴が開いてる。虫が食っちゃったみたいなんだ。ケーキも少し欠けてたんだよね。もらった子がお腹壊しちゃいけないと思って」
「だからってあんたが食べることないでしょ!あーもうっ!ホントあんたって…!」
いのはあまりの事態に二の句が継げないようだ。
あーあ…どうすんだよ…。
めんどうなことになったぜ…。
場に沈黙が下りる。
甘い匂いだけがその主張を続けている。