捧げもの
□きっかけは君の…
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クシナは、両手を大きく振って商店街の大通りを闊歩していた。
クシナをよく知る人々は、もう少ししとやかに歩けばいいのにと苦笑しながら彼女を見送る。
「クシナちゃん、何をそんなに急いでるんだい?」
店の外に品物を並べていた果物屋の女店主が、クスクスと声を掛けた。
クシナはキョトンとした様子で立ち止まる。
「別に急いでないわよ?普通に歩いてただけ」
「ならもう少し歩幅を小さくなさいな。そんな男勝りな歩き方じゃ綺麗な顔が台無しだよ」
クシナは大きくため息をついた。
「その類の台詞は聞き飽きたわ。みんな口を揃えて女らしく女らしくって…女らしくより、自分らしくの方が大事!」
こりゃ一本取られたと豪快に笑う店主に手を振って、クシナは再び歩き出した。
小さくまとまってるのが女らしいってことなら、そんなの願い下げだわ。
昔っから言われ続けてることだもの、今更どうってことないもんね。
フンと鼻を鳴らす。
しかし、クシナは知らなかった。
最近の周りの評価が、男勝りのオテンバ娘から快活で美しい女性に変わりつつあることを。
「きみ」
大通りを少しはずれたところで、頭上から声が降ってきた。
振り返る間もなく、目の前にふわりと人が降り立つ。
無駄のない、軽やかな動きだ。
スラリとした背丈に身体つき。
決してがっちりとはしていないが、きちんと鍛えられているのであろう。
先程の動きは、クシナが今まで出会ったどの忍よりも静かだった。
細い青色の瞳に通った鼻筋、穏やかに緩められた口元。
そして、それぞれ好き勝手な方向を向いた金色の髪。
見かけない顔だ。
もしかして、この男が、最近任務のためにこの国に滞在しているという木の葉の忍だろうか?
クシナは頭の片隅で思った。